著作権とは
著作物とは
著作権法では、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文学、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法2条1項1号)。
例えば、小説、音楽、絵画、建築、映画、写真、プログラムなどが著作物となり得ます(法10条1項各号)。
重要なのは「思想又は感情を創作的に表現した」という部分ですが、これをわかりやすく言うと、作者の考えや気持ちを、何らかの創意工夫をして表現したもの、となります。
創作性
「創作的」といえるために、高度な芸術性等は要求されず、その表現に「著作者の個性が何らかの形で表れていれば足りる」とされています(東京高判昭和62年2月19日判時1225号111頁)。
すなわち、たとえばあなたが芸術的でないと感じる表現であっても、何かしらの創意工夫がされた表現であれば、それがありふれた表現である場合や、そもそも創作性を発揮するだけの選択肢がない表現である場合を除いて、原則として創作性が認められます。
表現とアイデア
また、著作権法においては、「表現」自体と、その背景にある「アイデア」とは区別されており、具体的な表現のみが保護されています。したがって、斬新・独創的なアイデアに基づく表現であっても、仮にそのアイデアを思い付いたとすれば、誰がやっても同じような表現になるという場合、「表現」の創作性は否定されることになります。
しかし、どこまでが「アイデア」で、どこまでが「表現」なのかは判断が難しい場合も多く、この点が争点となった裁判例も多くあります(参考裁判例として、大阪高判令和3年1月14日金魚電話ボックス事件)。
著作権の対象とならないもの
例外的に、上記の創作性等の要件を満たすかに関係なく著作権が問題にならないものとして、以下の4種類が定められています(法13条各号)。
①憲法その他の法令
②国または地方公共団体等が発する告示、訓令、通達等
③裁判所の判決、決定、命令、審判、行政庁の裁決等
④①~③の翻訳物及び編集物で、地方公共団体等が作成するもの
著作権とは
著作権とは、著作物の利用を独り占めし、他人による無断利用を制限できる権利です。著作物が無断利用された場合、著作権者は、これを差し止めることや、生じた損害の賠償請求をすることができます(法112条、民法709条)。
法定の利用行為
著作権により利用を制限できる利用行為は法定されています(法21条以下)。
・複製(例えばコピーすること等)
・公の場での上映
・譲渡
・貸与
・公衆送信(例えばSNSにアップロードすること等)
・翻案(もとの著作物を真似して、その表現上の特徴を残したまま、新たな創作性も加えた表現をすること)
などです。
著作物を翻案したものを二次的著作物といいますが、二次的著作物の利用についても、もとの著作物の著作権者の権利が及びます。
著作権が制限される場合
著作権法には、例外的に著作物の無断利用が許される場合も規定されています(法30条以下)。
例えば、
・私的範囲内での使用を目的とする複製
・公表された著作物を正当な範囲で引用して利用する場合
・非営利目的での上演等
・時事の事件の報道のための利用
などです。
著作者人格権とは
なお、著作物にまつわる権利として、著作者人格権というものもあります(法18条以下)。
著作者人格権には、以下の4つの権利が含まれます。
①公表権(未公表の著作物を勝手に公開されない権利)
②氏名表示権(原著作物又は公衆への提供等の際に、自分好きな著作者名を表示したり、表示しないこととする権利)
③同一性保持権(著作物やその題号を勝手に改変されない権利)
④著作者の名声、声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を禁止する権利
著作権は譲渡が可能で、作者以外の人が著作権を有していることもありますが、著作者人格権は譲渡することができません。したがって、著作権を譲渡しても、原則として著作者人格権は作者の元に残ることになります。
著作権侵害のリスク
著作権侵害のリスクは民事上のリスクと刑事上のリスクに分けられます。
民事上のリスク
著作権侵害を行った場合、以下の請求を受ける可能性があります。
・差止請求
・損害賠償請求
・不当利得返還請求
・名誉回復措置請求
差止請求
「差止請求」とは、侵害行為を止めるように請求することであり、具体的には著作権を侵害したものの販売停止、画像等の削除などの請求です。なお、著作権侵害の恐れがある場合に、侵害の予防を求めることもできます。
損害賠償請求
「損害賠償請求」とは、著作権侵害により権利者が被った損害の賠償を求められることであり、具体的にはライセンス料相当額の損害賠償請求(権利者が利用許諾して利用させていた場合に得られたであろうライセンス料)、著作権侵害者が侵害行為により得た利益相当額の損害賠償請求などがあります。
不当利得返還請求
「不当利得返還請求」とは、著作権などを侵害した者が、法律上の原因なく、侵害行為によって得た利益を返還するよう求めることをいいます。
著作権侵害を知っていた者に対しては、得た利益と利息の返還を求めることができますが、知らなかった者に対しては、利益が残っている範囲でしか請求することができません。
名誉などの回復措置請求
作家や俳優、歌手などの有名人が著作権侵害により名誉や信用を失った場合に、それを回復するための措置を請求することができます。例えば、謝罪広告などを新聞等で掲載するなどの措置です。
刑事上のリスク
著作権侵害は犯罪にも該当し、刑事罰を問われる可能性もあります。
個人の著作権侵害の場合、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金(両方科される場合もあります。)、法人に所属している者が職務上著作権侵害を行った場合、法人に対し、3億円以下の罰金が科されることもあります。
なお、犯罪は、「故意(わざと)」に著作権を侵害した場合に成立します。知らず知らずのうちに著作権を侵害した場合には、刑事罰は科されません。
身近にある著作権侵害の事例
画像・写真の無断使用
他人がインターネット上で公開している画像、写真などを無断で自分のサイト、SNS等に掲載した場合、著作権(複製権、公衆送信権)侵害となります。
著作物の改変
他人の著作物に係る文章を一部書き換えたり、イラストを改変したりした場合、著作者人格権(同一性保持権)の侵害となります。
記事の社内でのコピー
新聞記事やインターネット上に掲載されているニュース記事をコピーして社内で配布したり、新聞記事等をスキャンしてデータ化し、社内で共有する行為は、著作権侵害に該当する可能性があります。
新聞記事等の著作権を管理する団体がありますので、会社の業務で記事を利用する必要がある場合、許諾料を支払いましょう。
音楽CDの商用利用
社内で音楽を流したり、レストランなどでBGMとして音楽を流すなど、音楽CDを商用利用する行為は、それが自分で購入したCDであっても、著作権侵害に該当する可能性があります。
他人の著作物の引用
他人の書籍などに書かれた文章を引用する場合、出典を明示していても、著作権法に定めるルール(自分の著作物が主、引用部分が従という関係になっていること、自分の著作物と引用部分が明確に区別されていること、引用部分を改変していないこと、引用する必要性があることなど)に従っていなければ、著作権侵害に該当する可能性があります。
弁護士に依頼できること
どのような場合に弁護士に相談すべきか
著作権に関し、弁護士が相談を受ける場合として以下のものがあります。
・著作権を侵害された場合
・著作権を侵害されたと訴えられた場合
・著作権が関連する契約を締結する場合
著作権を侵害された場合
【侵害事例】
自社のホームページの写真、イラスト、文章などのコンテンツが無断で利用されている、自社の製品を模倣した製品が販売されているなどの事例があります。このよう事例を放置すると、自社製品の売上減少、集客力の低下などに繋がります。
【弁護士に依頼できること】
著作権を侵害された場合、侵害者への警告、示談交渉、訴訟などの措置を講ずることができますが、「そもそも著作権侵害に該当するのか」、「必要となる証拠は何か」、「損害はどのように計算したらよいか」などに関し、法的知識や過去の裁判例に基づく検討を要します。また、どのような対応が適切かは事案によって異なってきます。
著作権に詳しい弁護士に相談すれば、事案に応じ
・侵害者への警告・示談交渉
・差止請求に関する仮処分
・知的財産に関する調停
・差止請求・損害賠償請求に関する訴訟
など、適切な対応をとることができるため、問題の早期解決や権利者の利益の実現などを期待することができます。
著作権を侵害されたと訴えられた場合
他社から自社の著作権を侵害しているとして訴えられた場合、事実の確認、著作権侵害の成否の検討、交渉、訴訟対応など迅速に対応する必要があります。
【弁護士に依頼できること】
他社から著作権侵害だと主張されている場合でも、「著作物に該当しない」、「他人の著作物に依拠していない」、「他人の著作物と類似していない」、「著作権法上の著作物を利用できる場合に該当する」などの理由により著作権侵害に該当しない場合もあります。また、相手の損害賠償請求額が不当に高額である可能性もあります。さらに、相手との交渉、訴訟対応には、法的な知識や交渉スキルが必要となり、自社で対応すると、かえって事態が深刻化する可能性もあります。
著作権に詳しい弁護士に依頼した場合、事案に応じて
・著作権侵害に該当するかの法的検討
・相手との交渉
・仮処分、訴訟、調停
などを迅速かつ適切に対応してもらうことができます。
著作権が関連する契約を締結する場合
著作権が関連する契約は主に以下の4つになります。
・著作物の利用許諾(ライセンス)契約
・著作権の譲渡契約
・Webサイト制作・システム開発に関する契約
・製品のデザインに関する契約
【弁護士に依頼できること】
著作権に関する契約を締結する場合に、「利用できる著作物の範囲」、「改変・二次利用が許されるか」、「どのような行為が禁止されるか」、「著作権は誰に帰属するか」、「製作代金に著作権の譲渡対価が含まれるか」など細かな取り決めが必要となります。
どのような条項を設け、それをどのように規定するかは、事案や当事者の合意内容になって異なるため、ひな形をそのまま利用しても、必要な条項が漏れていたり、不必要な条項や適切でない条項が存在したりするなどして、後々トラブルになることがあります。
このような場合は、弁護士に依頼することで
・契約書の作成
・契約書のリーガルチェック
などの対応が依頼できるため、後々トラブルが生じないように、契約を締結することができます。
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