(宿泊業)お客様が備品を盗難してしまった
目次
宿泊客による備品の持ち帰り
ホテルの客室には様々な備品がありますが,宿泊客の中には,無断でこれらを持ち帰ってしまう方がいらっしゃるかもしれません。備品の持ち帰りが発覚した場合,法的にはどのような手段が考えられるでしょうか。
民事的救済
(1)客室にある備品はホテルの所有物ですから,宿泊客が無断で持ち帰ってしまった場合,ホテルはその宿泊客に対し,所有権に基づいて備品の返還を求めることができます。
また,同種備品を調達し,再度客室に備え付けるのにかかった費用を「損害」として,その宿泊客に賠償請求をすることも考えられます。
例えば,ドライヤーが盗まれたとして,同種ドライヤーを購入するのにかかる費用,それを再び客室に備え付けるのにかかる費用(固定していた部分を破壊された場合などは,その原状回復費用など)を「損害」と捉え,賠償請求することが考えられます。
(2)相談に来られて,我々としても苦労するのは,持ち帰った宿泊客を特定できないことです。
「いつの間にか無くなっていた!」というのでは,過去その部屋に宿泊したどのお客様が持ち帰ったのか特定できず,請求のしようがありません。
盗難の可能性が考えられる備品については,お客様が入れ替わるごとに,チェックリストなどを用いて記録を残しておくのが望ましいでしょう。
そうすれば,名簿に基づいて盗難した人物を特定することができます。
(3)盗難した人物を特定できたとして,次に検討しなければならないのが,「民事上の請求をすることの経済的合理性」です。
費用をかけて返還請求をしても,すでに転売されていたり,壊されたりしていれば意味がありません。
賠償請求をするにしても,相手に支払能力がなければ回収できません。特に外国人観光客の場合は,帰国されてしまうと請求は非常に困難となりますので,費用対効果を考える必要があります。
民事上の請求にかかる費用や回収可能性については,我々にご相談いただければ,事案に応じた最善のアドバイスをさせていただきます。
刑事的手段
(1)備品の持ち帰りは,窃盗罪(刑法235条)に該当し得るものです。
民事上の請求が難しい場合でも,警察に被害届を提出することで,捜査してくれる場合があります。
実際,客室の備品盗難で,宿泊客が逮捕されるに至った事例もあります。
(2)もっとも,「持ち帰りの可否」については,お客様との間でトラブルが生じないよう,事前に整理しておく必要があるでしょう。
例えば,消耗品(歯ブラシ,歯磨き粉,カミソリなど)については,お客様が宿泊するにあたって使い切ることを前提としていますので,「持ち帰り可」に疑問の余地はないでしょう。
しかし,同じ消耗品でも,例えばボトル内のシャンプーを別の容器に移し替えて持って帰る行為,あるいは,通常使用する量を遥かに超えてトイレットペーパー等をごっそり持って帰る行為については,窃盗罪が成立し得ます。
よく問題になるのは,タオル類やバスローブ,スリッパです。
ホテルによっては,持ち帰りを許可しているところもあったりします。
お客様が「持ち帰りOKだと思った」と弁解すれば,「故意」がないとして,窃盗罪にならない可能性があります。
持ち帰られて困るものについては,「持ち帰り厳禁」といった注意喚起を分かりやすい場所に明記しておくのが望ましいでしょう。
また,お客様が備品を持ち帰ってしまった場合の取扱いについては,あらかじめ宿泊約款に明記し,客室に備えつけたり,ホームページ上に掲載しておくことも有効です。
当事務所では,約款の作成やリーガルチェックについても対応させていただきます。
まとめ
そもそも盗難ができないように,事前に対策しておくことはもちろん重要ですが,悪意ある人間は,こちらがいくら対策を考えてもそれを乗り越えてきます。
そこで大切なのは,「泣き寝入りで終わらないこと」です。
ホテル・旅館業を営む全国の皆さまが,毅然とした態度で不正を追及し,「逃げ得」を許さない姿勢を貫けば,自ずと被害も減っていくことでしょう。
それを実現する一つの方法として,我々弁護士をご用命いただければと思います。
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