著作権におけるライセンス契約とは
1 ライセンス契約とは
ライセンス契約とは、一般的には知的財産の権利者が、知的財産権で保護されている特許、意匠、商標、著作物等の実施または利用を許諾するための契約です。
例えば、ある企業が発明し、特許を取得した技術を他社に実施させる場合、あるデザイナーが創作したイラストを使用してメーカーが商品を製作する場合などに締結する契約となります。
著作権におけるライセンス契約では、利用許諾の対象・範囲及び期間、ライセンス料、権利者及び許諾者の責任・義務などが定められます。また、契約によっては、独占的な利用権や、サブライセンス(再許諾)の禁止などが定められることもあります。
以下では、著作権譲渡契約との違い、ライセンス契約の条項、ライセンス契約における注意点を解説します。
ライセンス契約は比較的複雑であり、かつ、注意点も多岐にわたりますので、これらからご説明する予備知識を踏まえるとともに、ライセンス契約を締結する際には、事前に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
相談だけで回避できるトラブルは多数あります。トラブルになる前に予防できれば、費用と時間を大幅に節約することができます。
2 著作権譲渡契約との違い
著作権譲渡契約は、著作物の著作者が自らの著作権を第三者に譲り渡す契約です。これにより、譲受人が複製権、譲渡権、頒布権などの著作権(ただし、著作者人格権を除く)を取得することになります。
これに対し、著作権におけるライセンス契約は、ライセンシーに対し、著作物の複製等を許諾するもので、著作権自体はライセンサーが保持し続けます。
例えば、あるデザイナーが、自ら創作したイラストの著作権を製作会社に譲渡した場合、その作品の著作権を所有するのは、以降その会社になります。
他方、あるデザイナーが自ら創作したイラストの複製等をメーカーに許諾する場合、著作権自体は依然としてそのデザイナーが保有し続けることになり、メーカーがどの期間、どの範囲でイラストを使用できるかは契約の内容によることになります。
3 ライセンス契約の条項
ライセンス契約では、以下のような条項を設け、その内容を明確にすることが必要です。
〇利用許諾の対象
〇利用許諾の範囲(地域・利用態様等)・期間
〇独占or非独占
〇対価の有無・金額・支払方法
〇権利の保証
〇契約違反の効果
〇契約の解除条件・効果
〇損害賠償の定め
〇免責事項
〇専属的合意管轄裁判所
4 ライセンス契約における注意点
ライセンス契約を締結する際には、以下の点に注意する必要があります。
①契約内容の明確化
ライセンス契約に含まれる利用許諾範囲や期間、ライセンス料の計算及び支払方法、利用制限など、契約の各条項を明確に理解するとともに、ライセンサー・ライセンシーがどのような権利を保有するかを正確に理解しておくことが重要となります。
②知的財産権の確認
ライセンス契約を締結する前に、ライセンスの対象となる著作物が他人の知的財産権を侵害していないかどうかを確認することが必要です。
③契約の適法性の確認
ライセンス契約が法的に適法なものであるかどうかを確認することが重要です。特に著作権法や不正競争防止法などの法律に抵触しないかどうかを確認する必要があります。
④類似品の存在
ライセンス契約を締結する前に、同様の商品やサービスを提供する他の企業が既に存在するかどうかを確認することが重要です。特に、競合他社が既に同様の著作物を利用してビジネスを行っている場合、契約するかどうかも含め、契約内容の再検討が必要になります。
⑤知的財産権侵害への対処
ライセンス契約を締結する際には、第三者がライセンサーの知的財産権を侵害した場合の対処策を明確にしておくことが必要です。
⑥機密保持義務の明確化
許諾の対象となる著作物に機密情報が含まれる場合、又はライセンス契約を運用する上で機密情報を開示することになる場合、機密保持義務について明確に定めておくことが必要となります。具体的には、情報の取り扱い方法、情報の開示先、情報の取り扱いを委託する場合の規定などを定めることが望ましいです。
5 弁護士への相談時期等
以下のページでは、
・著作権に関する相談事例
・著作権トラブルの未然防止策
・著作権トラブルの弁護士相談時期
・知的財産権についての弁護士の使い方ベスト4
・弁護士費用の目安
・弁護士へ相談する場合のメリット
をまとめていますので、あわせてご参照いただき、ライセンス契約への備えを万全にしましょう!
https://kyotosogo-law.com/tyosakuken/
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