どのような場面で社外役員の設置が必要となるのか
A) 未上場会社と社外役員
未上場会社の場合、監査役会設置会社であって、大会社(資本金計上額5億円以上または負債計上額200億円以上)かつ公開会社(株式の全部または一部を会社側の承認なしに自由に譲渡できる会社)にあたらない限り、原則的に社外取締役の設置義務はないと整理することができます。
しかし、法律上の義務がなかったとしても、未上場の会社が社外役員を設置することにはメリットがあります。
社外役員は、社内の利害関係やしがらみにとらわれず、第三者的な目線に立って、会社の利益拡大や企業価値の向上に努めます。会社は社外役員の意見を通して、市場が会社に求めていることがらを吸収することができます。
また、現段階では未上場であっても、いずれ上場を目指す場合には、監査役会を設置して、社外取締役も選任しておく必要があり、かつ、申請前1年間以上の間、監査役会および取締役会を適正に運用しておくことが求められます。
さらなるステップアップや事業拡大のためには、未上場の会社であっても、社外役員を積極的に設置することが有用です。
B) IPOのための社外役員
IPOのためには、上場会社と同様の社内体制を確保していることが求められます。社外役員についても例外ではなく、監査役会を設置して社外取締役も1名以上選任しておく必要があります。
このうち監査役会については、3名以上で構成されなければならず、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないので、IPOのためには、最低でも社外監査役を2名以上、選ばなければなりません。
こうした体制は、IPO時に整っていれば足りるというものではなく、原則的に直前期と直前々期の2期間にわたって求められることが通常です。そのため、3年前から準備をはじめることが必要です。今すぐにというわけではなくても、将来的にIPOを視野に入れはじめたときが、社外役員を選任すべきタイミングとなります。
C)上場会社における社外取締役登用の拡大
東京証券取引所ではこれまでの間、上場企業に対し、2名以上の独立社外取締役の選任を促す上場規制を適用してきましたが、2022年の春に予定されている再編後は、さらにこれを取締役会の3分の1以上を独立社外取締役で構成するように求める方針であることが明らかにされています。
統計によれば、2020年10月時点において、市場第一部の上場企業の98.5%が2名以上の独立社外取締役(一般株主と利害相反が生じるおそれのない社外取締役)を選任しているものの、取締役会の3分の1以上を独立社外取締役で構成しているのは、未だ74.2%であるとされています。現在、上場会社においても、社外取締役の選任拡大が急ピッチで進められています。