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著作権を侵害された場合に損害賠償請求するには

著作権侵害の要件

著作権侵害が成立するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・著作物に該当する
・著作権の存在が認められる
・依拠性がある
・同一性又は類似性がある

それぞれの要件を詳しく見ていきます。

1 著作物に該当する

⑴ 著作物の要件

文芸、学術、美術、音楽などの範囲に属する

工業製品などの産業的所産については、特許法、実用新案法や意匠法などで保護されます。裁判例において、いわゆる応用美術の著作物性が問題となることが多いです。

思想又は感情を表現したもの

表現者の何らかの考えや気持ちが表れている必要があり、事実の伝達にすぎない雑報や報道は著作物に該当しません。

また、表現したものであることが必要であり、アイデアそれ自体は著作物ではありません。

創作性

一般的には著作者の何らかの個性が表現されていれば足りるとされており、斬新性や高度な創作性までは要求されません。素人が描いたイラスト等にも創作性は認められます。

⑵ 著作物の種類

いわゆる著作物であるものは主に以下の内容を指します。

言語の著作物(小説/脚本/論文/講演/俳句/詩歌)

音楽の著作物(楽曲・楽曲を伴う歌詞)

舞踊又は無言劇の著作物(日本舞踊/バレエ/ダンス/パントマイムの振付)

美術の著作物(絵画/版画/彫刻/漫画/書/舞台装置(美術工芸品も含む))

建築の著作物(芸術的な建造物)

地図又は図形の著作物(地図又は学術的な図面、図表、模型、設計図)

映画の著作物(劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフト、コマーシャルフィルム)

写真の著作物

プログラムの著作物

二次的著作物・編集著作物・データベースの著作物

 

2 著作権の存在が認められる

⑴ 保護期間

 原則として死亡、公表、創作した年の翌年1月1日から「70年」

⑵ 外国人の著作物の保護期間

条約上保護義務を負う外国人→70年

相互主義→我が国より保護期間が短い場合はその期間

3 依拠性がある

既存の著作物を参考に、創作していることが要件であり、独自で創作し、偶然既存の著作物と類似した場合、著作権侵害には該当しません。

依拠性が要件となっているため、裁判では「偶然に一致した」という主張がなされることがあります。ほぼ同一の場合、このような主張は認められないことが多いですが、ある程度の相違がある場合、①両著作物の実質的同一性・②アクセス可能性により判断されます。

※「歴史書籍・壁の世紀」事件

原告と被告は、NHKの番組制作・NHK出版のために共同研究を行っていたが、意見が対立し、共同研究を解消した。その後に、原告は原告著作物を完成し、被告に渡した。被告は独自の著作物として「壁の世紀」という出版物を発行した。

①被告が原告著作物を所持し、これに目を通したり、参照したりしたこと、②共同研究が解消されるまでの間に、原告著作物に加筆訂正したことがあること、③原被告著作物間には、表現上全く同一のもの、漢字・ひらがな表記をわずかに改めたにすぎないもの等が複数見られること、④被告書籍には、原告が新たに推論した部分や、原告が明らかに誤った部分等を踏襲しているものが含まれていること等から、被告は原告著作物に依拠して被告著作物を完成したと認められた。

4 同一性又は類似性がある

両著作物の表現上創作性がある部分が同一又は類似していることが必要です。裁判実務では類似性は以下の手法により判断されます。

① 共通点(同一性のある部分)の認定

② 同一性ある部分が創作的表現であるか否か表現であるか、創作性があるか

③ 表現上の本質的な特徴を直接感得しうるか

④ 原著作物の創作性のある部分をどの程度取り入 れているか、それによって原著作物の特徴部分を直接感得することができるか

判例における翻案の判断基準(江差追分事件(最判H13.6.28))

①既存の著作物に依拠し、かつ

②その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、

③具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、

④これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。

⑤思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の言語の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は、既存の著作物の翻案に当たらない。

著作権を侵害された場合の損害賠償請求

1 著作権を侵害された場合の損害について

侵害者が故意または過失により著作権を侵害した場合、著作権者は侵害者に対し、著作権侵害により被った損害の賠償を請求することができます。著作権侵害により被った損害として、①著作権侵害がなければ、支出を要しなかった費用(積極的損害)、②著作権侵害がなければ得られたであろう利益(消極的損害)があります。

積極的損害としては、著作権侵害の調査費用、弁護士費用、値段が安い侵害品が市場に出回ったことにより権利品の値段を下げざるを得なくなったことによる損害、売り上げ回復のための宣伝広告費、精神的損害(著作者人格権を侵害されたことによる慰謝料等)などがあり、実際にこれらの費用を支出したことと、著作権侵害との相当因果関係を証明するだけでよいため、比較的立証は容易です。

次に消極的損害としては、侵害行為を原因として権利者の販売数量が減少したことによる逸失利益が考えられますが、売上減少等と著作権侵害との相当因果関係を立証するのが非常に困難であるため、著作権法は、著作権者を保護するために、消極的損害の額について以下の推定規定が設けています(著作権法114条)。

著作権侵害による損害賠償を請求できるのは、著作権者、出版権者、著作隣接権者です。なお、著作権者から、著作物の利用について独占的な権利を許諾を受けている者も請求できる可能性はあります。

2 著作権侵害の損害額の計算方法

⑴ 譲渡等数量からの推定規定(著作権法114条1項)

著作権者が著作権侵害により被った損害の賠償請求する場合に、著作権侵害者が侵害行為によって作成された物を譲渡した数量に、著作権者がその侵害がなければ販売することができた物の単位数量あたりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者の販売等を行う能力に応じた額を超えない限度において損害額とすることができます。

ただし、譲渡数量の全部または一部を著作権者等が販売することができない事情があるときは、その事情に相当する数量に応じた額を控除するとされています。

【計算方法】

損害額=(侵害品の譲渡等数量×1個当たりの著作権者等の利益)(ただし、この額が著作権者の販売等を行う能力に応じた額を超えない限度)-(権利者が販売等を行えない事情に応じた金額)

例えば、著作権侵害者が侵害品を1万個販売した場合に、著作権者等の1個あたりの利益額が300円の場合、著作権者の損害額は300万円と推定されます。ただし、例えば著作権者が個人事業者で著作物の複製物を1000個しか製造できない場合、1000個分しか請求できず、損害額は30万円となります。その他、侵害者が1万個販売できたのは、侵害者の営業努力による場合(例えば、大々的に宣伝活動を行った結果、販売できた場合など)、その限度で損害額は減額されることになります。

なお、著作権者等が侵害行為時にその著作権等を、有体複製物又はネット配信による方法によって全く販売又は配信しておらず、販売又は配信の予定もない場合、「著作権者がその侵害がなければ販売することができた物」自体が存在しないということになるため、本項の推定規定の適用を受けることはできません。

次に著作権者等の利益の額は、訴訟上は著作権者等が立証する必要があります。この利益の額に関し、純利益説(粗利益からその売上高を獲得するために必要とされる販売費及び一般管理費を差し引いた利益を著作権者等の利益とする説)と、限界利益説(売上高から製造原価と販売管理費のうち変動費(権利品の販売行為に直接関係する人件費及び販売費など)を控除した額を著作権者等の利益とする説)があります。純利益説の場合、著作権者等の利益の額が低額になってしまうため、限界利益説を採用する裁判例も増えています。

さらに、「譲渡数量の全部または一部を著作権者等が販売することができない事情」としては、①当事者の事情、②市場の事情、③その他の事情があります。例えば、①に関しては、侵害者の広告等による営業努力、市場開発努力、独自の販売ルートを獲得するなどの能力、侵害品に付加的機能がある、価格が安いなどの事情があります。次に②の事情としては、競合製品や代替品が市場に存在するなどの事情が考えられます。さらに、③の事情としては、法規制等により権利者がその製品を販売できなくなったなどの事情が考えられます。   

⑵ 侵害者の利益額による推定規定(著作権法114条2項)

著作権等侵害行為により侵害者が利益を受けている場合、その利益の額が著作権者の損害の額と推定されます。ただし、あくまで推定規定であるため、著作権者等が受けた損害額が侵害者の利益額より少ないことを立証すれば、推定が覆される可能性があります。

【計算方法】

損害額=侵害者が得た利益

例えば、著作権侵害者が侵害品1万個の販売により300万円の利益をえている場合、その額が著作権者等の損害額と推定されます。なお、多くの裁判例において、本項に関しても、著作権者等が販売等を行っていることが適用の要件とされています。

⑶ ライセンス料相当額による推定規定(著作権法114条3項)

著作権者等は、著作権侵害を行った者に対し、ライセンス料相当額を損害額として請求することができます。この規定は、損害額の最低限を法定した規定と考えられており、侵害者が実際の損害額がこれより小額であることを主張して損害賠償を減額させることはできません。したがって、立証の困難性から第3項に基づく請求を行うのが現実的な場合もあります。

【計算方法】

損害額=ライセンス料相当額

ライセンス料相当額は、侵害者の売上額×権利者のライセンス料率(又は業界のライセンス料率の相場)などの方法により算定されます。

例えば、権利者がライセンス料率5%で第三者にライセンスをしている場合において、侵害者が侵害品の販売により500万円を売り上げた場合、ライセンス料相当額は25万円となります。

損害賠償請求等をする場合の手続き

著作権侵害において損害賠償請求を行う際の手続きは主に以下の内容が挙げられます。

・問い合わせフォームなどで連絡する
・内容証明郵便を利用する
・仮処分の申し立て
・訴訟

問い合わせフォーム等による連絡

著作権を侵害されていることが発覚した場合、まずは取る必要があるため、問い合わせフォームやWebサイトに記載されている連絡先に連絡します。内容としては、著作権を侵害していること、侵害している根拠、相手方に対して求めることが主に伝える事項になります。

内容証明郵便の活用

相手方へメールや電話で連絡をしたとしても、返信が無いケースもあります。その際に活用したいのが内容証明郵便です。内容証明郵便とは、郵便局が一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスで、いつ、どのような内容の文書を、誰から、誰に対して郵送したものであるか、を差出人が作成した謄本によって証明することが可能となります。相手方に対してプレッシャーを与えることができるため、返答や対応を促すことが期待できます。

仮処分の申し立て

侵害行為の差止請求では裁判所に対して仮処分の申し立てを行うことが多いです。著作権者に著しい損害を与えている場合や緊急性が高いと判断された場合には、訴訟の結果が出る前に侵害行為の停止などを命ずる仮処分命令を裁判所が発します(民事保全法23条2項)。

訴訟

著作権侵害におけるトラブルは、最終的に裁判所へ訴訟を起こして争うことになり、裁判所に差し止めや損害賠償を命じる判決を求めます。

訴訟にまで発展する場合は弁護士に相談することを検討される方がほとんどですが、訴訟に発展する前に十分な証拠を集めることが重要ですので、著作権侵害をされていることが発覚した時点で弁護士に相談されることを推奨しております。

著作権に関連する事例はこちら▼▼▼

著作権に関連する判例解説

当事務所の弁護士費用の目安

当事務所では弁護士資格に加え、知的財産権(著作権)のプロである弁理士資格を有する専門家が在籍しております。

お困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。

①著作権を侵害することがないかという事前チェック

1時間あたり2万円(税別)

②著作権を侵害された場合・請求された場合の交渉・訴訟対応

内容証明郵便の作成

15万円(税別)~

輸入差止め(水際対策)

30万円(税別)~

事件(交渉・保全・訴訟)の着手金・報酬金

着手金(受任時にお支払いいただく費用。ファイトマネーです。)は、

・侵害された場合:相手への請求額

・請求された場合:相手からの請求額

を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。

請求額が、

・300万以下の場合、その8%

・300万を超え3000万以下の場合、その5%+9万円

・3000万を超え3億円以下の場合、その3%+69万円

・3億円を超える場合、その2%+369万円

 

報酬金(事件の結果の程度に応じてお支払いいただく費用。成功報酬です。)は、

・侵害された場合:相手から得た額

・請求された場合:相手の請求を排除した額

を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。

得た額又は排除した額が、

・300万以下の場合、その16%

・300万を超え3000万以下の場合、その10%+18万円

・3000万を超え3億円以下の場合、その6%+138万円

・3億円を超える場合、その4%+738万円

③著作権に関する契約書の作成・リーガルチェック

契約書の作成

・定型的なもの5万円(税別)~

・非定形なもの10万円(税別)~

契約書のチェック

・定型的なもの3万円(税別)~

・非定形なもの5万円(税別)~

※対象となる権利の価値、契約目的、リスクの内容、納期等を踏まえてご提案させていただきます。

なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、

来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限

年1回程度の研修が無料

に加え、高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックを無制限で対応することが可能です。

 

④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施

15万円(税別)~

※研修目的、時間、参加人数、開催場所等を踏まえてご提案させていただきます。

なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、

来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限

高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックが無制限

に加え、年1回程度の研修を無料で実施することが可能です。

 

1.相談料・契約書作成等の弁護士費用

知的財産に関する法律相談料

20,000円/1時間

鑑  定

150,000円~

契約書

契約書の作成

定型的なもの:50,000円~

非定型なもの:100,000円~

契約書のチェック

定型的なもの:30,000円~

非定型なもの:50,000円~

内容証明郵便の作成

150,000円~

輸入差止め(水際対策)

300,000円~

知的財産権に関する研修

150,000円~

 

2.事件(交渉・保全・訴訟)の着手金・報酬金

着手金:下記の算定基準により算定した額(事件の結果いかんにかかわらず、受任時にお支払いただく費用です。)

なお、経済的利益を算定しがたい事件については、着手金を75万円とします。

報酬:下記の算定基準により算定した額(事件結果の成功の程度に応じてお支払いただく費用です。)

なお、経済的利益を算定しがたい事件については、その額を1000万円とします。

 

着手金・報酬金の計算方法(別途消費税がかかります。)

経済的利益の額

着手金

報酬金

300万円以下の事件

8%

16%

300万円を超え3,000円以下の事件

5%+9万円

10%+18万円

3,000万円を超え3億円以下の事件

3%+69万円

6%+138万円

3億円を超える事件

2%+369万円

4%+738万円

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