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著作権侵害、商標権侵害、意匠権侵害、不正競争、特許権侵害、実用新案権侵害等 「知的財産にまつわるトラブルへの対応方法」について弁護士がポイントを解説します

弁護士による知的財産トラブルのご相談


 2020年7月20日の特許庁長官就任挨拶において、コロナの影響による特許出願件数の減少自体を心配するよりも、リーマンショック後のようなイノベーションの遅れを繰り返さないことが肝要であるとの指摘とともに、特許庁としても、イノベーションを促進し、産業の発展に寄与するという役割を十分に果たしていく決意が語られました。
 そして、特許庁の取組として、「世界最速・最高品質」の審査を引き続き堅持すべく、審査体制を維持・強化すること、AI・IoT技術の時代にふさわしい特許制度を整備すること、地域経済を支えイノベーション創出を担う中小・スタートアップ企業の支援にスピード感をもって取り組むこと、経済のリモート化に対応するため、特許庁における申請手続等の一層のデジタル化についても検討を進めることが示されました。
 企業の屋台骨は、長年の技術と経験によって作り上げられた製品やサービスとしての「主力」に支えられています。
しかし、競争の激しい昨今の経済情勢においては、他社において同種の製品やサービスを模倣したものを市場に投入することもいとわない例も少なくなく、ひとたびそのような事態に直面した際には、自社の存続にかかわる大問題となりかねません。
京都総合法律事務所では、知的財産に注力した弁護士が中心となり、知的財産に特化したサービスをご提供しています。

事務所の経験・実績

 当事務所では、独立行政法人工業所有権情報・研修館京都府知財総合支援窓口及び派遣支援専門家である 弁護士・弁理士 拾井美香 が知的財産を重点的に取り扱っており、出願、訴訟及び契約交渉において、数多くの経験を有しています。
 その経験を活かし、イノベーションとともに進歩する知的財産の分野において、最新の知見に基づいた契約のあり方のご提案、商品開発や契約の場面で知的財産を取り扱う従業員向けセミナー等を通じて御社の企業活動をサポートさせていただきます。

経営者へのメッセージ

 自社の製品やサービスは、特許、実用新案、意匠権、著作権といった知的財産権を適切に行使することにより守ることができます。
とはいえ、知的財産権は、その専門性も相まって複雑であり、正確な理解と運用に皆様がお悩みであることは、私達もセミナー等を通じて感じているところです。

 ところで、「デザイン経営」という言葉をご存知でしょうか。

 特許庁が推進している「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。
「デザイン経営」の本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すとされています。

特許庁HP https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

 私達がご提案する解決策も同様です。
クライアントを中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想(=先例や判例)にとらわれない柔軟で実現可能な解決策を生み出すこと。
私達は、知的財産に関するお悩みに対し、柔軟で実現可能な解決策をご提案させていただきます。

知的財産権について

 「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいいます(知的財産基本法2条1項)。

 このように、知的財産権は、大きく次の2つに区別されます。
①「知的創造物についての権利
特許権や著作権等の創作意欲の促進を目的とした権利
②「営業上の標識についての権利
商標権や商号等の使用者の信用維持を目的とした権利

発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいいます(特許法2条1項)。

考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいいます(実用新案法2条1項)。

意匠」とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物(建築物の部分を含む。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)であっつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法2項1項)。

著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1項1号)。

 人間の幅広い知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与えるようにしたのが知的財産権制度です。

 知的財産は情報であり、コピーが容易で、不特定多数が同時に消費することが可能であるため、自由市場にまかせると簡単に陳腐化してしまい、創作意欲を削いでしまうという問題があります。
 そこで、知的財産を権利として保護することで、創作意欲の保持・向上を図り、より良い価値が生まれる土壌を形成しようとするのが知的財産制度です。
 なお、近時、NFTが話題を集めていますが、これは、デジタルコンテンツに固有性・非代替性・希少性を持たせる機能があり、知的財産を保護する手段として注目されています。

 我が国では、2002年7月に示された「知的財産戦略大綱」において、無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、我が国経済・社会の再活性化を図る国家戦略「知的財産立国」が示され、知的財産の重要性はますます高まっています。

参照:特許庁HP
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/seidogaiyo/chizai02.html

商標権侵害

1.どのような場合に商標権侵害が成立するか

 自社が商標権を有する商標と同一又は類似の商標を、第三者が商標権に係る指定商品と同一又は類似の商品又は役務(サービス)に使用した場合、商標権侵害が成立します。

 ここでいう商標の使用とは、商品や商品の包装等に商標を表示して、当該商品を販売、輸出、輸入等することをいいます。インターネットの通販サイト等で商標を表示して商品を販売することも商標の使用に該当します。また、飲食、宿泊、運送などのサービスを提供するために使用する物(レストランの食器、ホテルのアメニティグッズ、運送用のトラックなど)に商標を表示すること、インターネットの画面に商標を表示してサービスを提供すること(オンラインレッスンで商標を表示すること)、商品又はサービスに関する広告等に商標を表示することをいいます。

 このような商標の使用行為を行った場合に商標権侵害が成立します。

2.商標権侵害のリスク

 他人の商標権を侵害した場合、販売停止を求められる、損害賠償を請求される、場合によっては刑事罰を課されるといったリスクがあります。
また、自社の登録商標と同じようなマークの商品が販売されるなどした場合、他社の商品等と誤認混同が生じて、売上が低下する、粗悪品等と間違えられる、ブランド価値が希釈化するといったリスクがあります。粗悪品等と間違えられた場合、企業の信用が低下することもありますので、注意が必要です。

3.商標権を侵害してしまった場合、又は商標権を侵害された場合にどのように対応すればよいか

✓他人が自社の登録商標と似通ったマークを使用しているので、使用を止めてほしい。自社が被った損害の賠償を請求したい。
✓他人から商標権侵害を主張されているが、侵害にあたるかどうか相談したい。どのように対応したらわからない。
✓商標権を侵害しているかもしれないが、引き続き使用したいので、ライセンスを受けられるように交渉したい。

 商標権侵害の成否に関しては、商標又は商品が類似するか、商標としての使用に該当するか、商標権の効力が及ぶ範囲の使用か、先使用権を有するか等、法的な検討が必要となるため、専門家に相談された方がいいでしょう。

 当事務所が商標の侵害事件について依頼を受けた場合、以下の対応を行います。

■交渉

 他人が自社の登録商標と似たような商標を使用している場合、警告書を送付して商標の使用を中止するように求めます。また、損害算定のために必要な情報の開示を求めます。
 自社が使用しているマークについて他人から商標権侵害を主張された場合、商標・商品の類否を検討した上で、商標権侵害を争う余地がある場合には、商標又は商品が非類似である旨の主張を行います。また自社のマークの使用が商標の使用に該当しない場合、自社が先使用権を有する場合には、その旨の主張を行います。商標権侵害が成立する場合は、ライセンス交渉、損害賠償額等についての交渉を行います。

■法的手続

 差止請求の仮処分申立て、差止請求・損害賠償請求訴訟、刑事告訴などの手続を行います。商標権侵害を主張して訴訟を起こされた場合には、代理人となって商標権侵害の成否等について争っていくことになります。
 商標権を侵害する商品が海外から輸入されている場合には、輸入差止申立ての手続を行います。

4.解決事例

■インターネットの通販サイトで、第三者が自社の登録商標と類似する商標を使用してバッグを販売していた事例において、警告書を送付して商標の使用を止めさせた。

■商標権者から、レストランの店名が商標権を侵害するという警告を受けた事例において、商標権の成否について反論を行うとともに、損害賠償額について減額交渉を行い解決した。

■商標権者から、照明器具に使用していた表示が商標権を侵害するという警告を受けた事例において、商標としての使用に該当しないという主張を行い、交渉して解決した。

著作権に関する相談事例

1.自社の著作権が侵害されたケースとして

A「自社のホームページに掲載している商品の画像を無断で使用し、第三者が商品の販売を行っている」
B「自社の製品のイラストと酷似したイラストを使った商品が販売されている」
などの相談事例があります。

 単にシャッターを押しただけで、誰でも取れるような写真は著作物に該当しませんが、自社の商品の販売用写真として、被写体の選択、角度、光の設定等を工夫して撮影した写真は著作物に該当し、著作権法で保護されます。これを第三者が無断で使用した場合、貴社の商品を転売する目的であっても、貴社の著作権を侵害することになります。

 また、例えば、文房具、バッグ、衣類などの商品用デザインとして製作したイラストと酷似するイラストを使用した商品を第三者が販売している場合にも著作権侵害が成立します。

 以上のような、第三者の画像の無断使用、デザインの盗用を放置した場合、貴社の売上は低下することになりますし、第三者が貴社の画像を用いて粗悪品などを販売している場合には貴社のブランド価値・信用の低下にもつながることになります。
A、Bのような事例が発生した場合には、弁護士に相談し、警告書を送付する、販売停止、損害賠償等を求めて訴訟提起するなどの措置を講じれば、早期に解決することができます。
 上記事例では、写真について著作権が成立するか、商品のイラストが著作物に該当するか、自社のイラストに依拠して作成されたものか、自社のイラストと第三者のイラストが類似するかなどの主張立証が必要となり、自社では対応が難しいケースが多いですので、著作権に詳しい弁護士に相談・依頼した方がよいでしょう。

2.著作権を侵害されたと訴えられたケースとして

C「自社が製作し、ネット配信しているゲームの画面が、他社が先行して配信していた他社のゲームの画面の著作権等を侵害するとして訴えられた」、
D「自社が出版している書籍の表紙のイラストが、イラストレーターが創作したイラストを盗用したとして訴えられた」
などの事例があります。

 Cの事例では、一審東京地裁は、水面や魚の姿の描き方、釣り糸に掛かったときから引き上げるまでに魚がどう動くかには様々な選択肢があるところ、三重の同心円を描いた上で、釣り針に掛った魚影を黒く描き、かつ魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくしたことが原告作品の「魚の引き寄せ画面」の表現上の本質的特徴であるとし、被告作品の画面は原告作品の画面を翻案したものであると判断し、原告の著作権及び著作者人格権侵害を認め、被告に対し、作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、約2億3500万円の損害賠償を命じました。
 この判決に対し、被告が控訴したところ、二審知財高裁は、両作品において共通する「魚の引き寄せ画面」の各表現はありふれた表現であるか、又はアイデアにすぎないとして翻案権侵害を否定しました。

 Dの事例では、東京地裁は、被告書籍の表紙のイラストは、A型の体型にデフォルメされた人形が左手で肩の高さに家を持ち上げている全体的構図のみならず、人形の手のひらの上の家が複数であること、家の構図、人形を肌色一色にする等、具体的表現に多くの共通点が認められ、これらの共通点は原告イラストの特徴的部分であるとし、両イラストの相違点を考慮しても、被告イラストは原告イラストの翻案物に該当すると判断し、原告の著作権及び著作者人格権侵害を肯定し、被告に対し、書籍の販売停止と1025万円の損害賠償を命じました。

 このように、著作権侵害で訴えられた場合、多額の損害賠償が認められるケースもあり、複製ないし翻案権侵害の要件である依拠性、創作性、類似性等についてきちんと主張立証し、争っていく必要があります。

 そのためには、著作権侵害について十分な法律知識、交渉能力等を有した弁護士に相談し、示談交渉や訴訟対応を依頼するのがよいでしょう。

3.著作権等が絡む契約を結ぶケース

・ソフトウエア開発委託契約
・製品デザイン契約
・著作物利用許諾契約
・著作権譲渡契約

など著作権及び著作者人格権が絡む契約では、「誰に著作権を帰属させるか」、「著作者人格権の行使を認めるか」、「翻案権及び二次的著作物に関する権利の取扱いをどうするか」、「著作物についてどこまで改変を認めるか」、「ライセンスの及ぶ範囲はどうするか」、「どのような行為を禁止するか」、「ライセンスの及ぶ範囲はどこまでか」「どのような事項を禁止するか」など、当事者間で話し合って合意し、契約書にきちんと定めておく必要があります。

 「相手から提示された契約書案に自社に不利な条項が含まれている」、「当事者間の合意内容をどうやって条項化すればいいかわからない」、「他に決めておくべきことはないか」などの相談を受けることがあります。
 自社の判断で契約書を作成した場合、後々トラブルとなった場合にうまく対応できないこともありますので、著作権に関する契約について十分な知識と経験を有する弁護士に契約書の作成、リーガルチェックを依頼するとよいでしょう。

不正競争防止法とは

1.不正競争防止法とは

 事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。

2.どのような行為が不正競争行為に該当するか

・周知表示混同惹起行為
 他人の商品・営業の表示 (人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの 以下「商品等表示」といいます。)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、 その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為をいいます。
 商号、商標のみならず、看板・特徴的な店舗表示(動くカニの形をした看板等)、商品の容器、商品自体の形態や店舗の外観が商品等表示として認められる場合もあります。

・著名表示冒用行為
 他人の商品等表示として著名なものを自己の商品・営業の表示として使用する行為をいいます。

・商品形態模倣行為
 日本国内において最初に販売された日から3年以内の他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為をいいます。

 なお、当該商品の機能を確保するために不可欠な形態は商品の形態から除外され、不正競争行為には該当しません。

・営業秘密侵害
 窃取等の不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為等をいいます。
 営業秘密として保護されるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.秘密管理性:秘密として管理されていること
2.有用性:有益な情報であること
3.非公知性:公然に知られていないこと

・技術的制限手段に対する不正競争行為
 技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴や記録、プログラムの実行、 情報の処理を可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号、役務を提供等する行為 をいいます。

・不正にドメインを使用する行為
 図利加害目的(不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的)で、 他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有または そのドメイン名を使用する行為をいいます。

・品質等誤認惹起行為
 品質等の誤認惹起表示」は、商品、役務又はその広告等に、 その原産地、品質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為をいいます。

・競争者営業誹謗行為
 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為をいいます。

・代理表示等冒用行為
 パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為をいいます。

3.不正競争行為に対しどのような対応が可能か

✓退職した従業員が自社の営業秘密を不正に持ち出して、利用している、あるいは第三者に提供した。この利用行為を止めさせたい。
✓他人が当社の人気商品の形態を真似した商品の販売をしているので、止めさせたい。
✓他社から、自社の店舗の外観が他社の店舗の外観に似ているとして裁判を起こされた。
✓第三者が、当社の商標と似たような名称を含むドメイン名を取得して、使用している。

 不正競争行為に対しては以下の対応が可能です。

・差止請求
 不正競争行為によって営業上の利益を侵害され、又はそのおそれのある者は、その侵害の停止又は予防を請求することができます。

・廃棄除去請求
 侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができます。

・損害賠償請求
 不正競争行為によって営業上の利益を侵害された場合、これによって被った損害の賠償を請求することができます。
 なお、不正競争防止法では、損害額の立証の困難さに鑑み、損害額の推定規定が設けられています。

・信用回復措置
 営業上の信用を害された者は、侵害した者に対して、信用の回復に必要な措置を請求することができます。例えば、謝罪広告、謝罪文を発送させるなどの方法が考えられます。

4.不正競争防止法に関する解決事例

■飲食店の店舗の看板デザインが他社の広く知られている店舗の看板に似ているとして、看板の使用禁止、損害賠償を求めて裁判を起こされた事例において、周知性、類似性、混同の有無等について争い、和解で解決した。

■退職した従業員が店舗の顧客情報を不正に持ち出して、独立開業した店舗で使用していた事例について、訴訟提起し、営業秘密の該当性、不正取得の有無等について争い、和解で解決した。

■自社の飲食店のメニューや料理の盛付が他社の飲食店のメニュー等に似ているので不正競争行為に該当すると主張して、メニュー等の使用禁止、損害賠償を求められた事例において、商品等表示の該当性、類似性、混同の有無について争い、和解で解決した。

■自社の社名を含むドメインが不正に取得した事例において、警告書を送付し、ドメイン使用を止めさせた。

生徒の演奏も著作権侵害? -音楽教室訴訟控訴審判決-

 ヤマハなどの音楽教室が日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し、著作権利用料を徴収する権利がないことの確認を求めた訴訟で、令和3年3月18日、知財高裁は、音楽教室における講師の演奏については著作権利用料を請求できるが、生徒の演奏については著作権利用料を請求できないと判断しました。

 この裁判では、講師及び生徒の演奏が「公衆に直接聞かせることを目的とした演奏」(著作権法22条)に該当するか等が争点となっていました。一審・東京地裁は、カラオケ店における顧客の歌唱について、音楽著作物の利用主体がカラオケ機器を設置し、客に利用されることで利益を得ているカラオケ店であると判断し、カラオケ店に著作権利用料の支払義務を認めたクラブキャッツアイ事件最高裁判決等を引用し、音楽教室で演奏される課題曲の選定方法、生徒及び教師の演奏態様、著作物の利用に必要な施設・設備の提供の主体、音楽著作物の利用による利益の帰属等の諸要素を考慮し、講師及び生徒いずれの演奏についても、利用主体は音楽教室であると判断しました。その上で、講師及び生徒の演奏は、公衆である他の生徒又は演奏する生徒自身に「聞かせることを目的」とするものであるとして、講師及び生徒の演奏のいずれについても音楽教室に著作権利用料の支払義務があると判断しました。

 これに対し、控訴審・知財高裁は、講師の演奏について一審の判断を維持しましたが、生徒の演奏については、「専ら演奏技術等の向上を目的として任意かつ自主的に演奏を行っている」、「本質は、講師に演奏を聞かせ、指導を受ける自体にある」ことを理由に、生徒の演奏の主体は生徒であるとした上で、生徒の演奏は、音楽教室との受講契約に基づき講師に聞かせる目的で自ら受講料を支払って行われるものであるから、「公衆に直接聞かせることを目的」とするものではなく、著作権侵害が成立する余地はないと判断しました。
 カラオケ店の顧客の歌唱と音楽教室の生徒の演奏で判断が分かれたのは、音楽教室では、生徒が技術の向上等を目的として自主的かつ任意に演奏を行っていることや、その目的のために講師に聞かせることを目的としていることに対し、カラオケ店での歌唱にはこのような目的がないことにあると解されます。また、仮に生徒の演奏について音楽教室の著作権利用料の支払義務を認めた場合、レッスン料の値上げに繋がり、音楽文化の発展が阻害されることになります。

 音楽教室に通う一生徒である私としても、知財高裁の判断は正当であると評価しています。
 知財高裁の判決に対しては、音楽教室及びJASRACのいずれも上告しています。最高裁でどのような判断がなされるか、注目されます。

イベントのタイトルと商標権

1.はじめに

 まちを歩いたり電車に乗ったりすれば、多様な行政目的の実現に向けた様々なイベントの案内をよく目にします。親しみやすいタイトルを考えたり、目を惹くチラシを作ったりする際、どこかで目にした言葉やインターネットで検索した画像等を参考にされることも多いと思われます。
 その際、どうか商標権や著作権といった知的財産権にご注意ください。知らず知らずのうちに知的財産権を侵害しているケースは案外多いものです。最終的に問題がなかったとしても、紛争が発生すれば業務が混乱することは必至です。
 今回は、知的財産権のうち商標権侵害について、抽象化した説例を踏まえて検討します。

2.説例

 あるイベントにおいて、「ボクササイズ」というタイトルをつけたチラシを配布し、イベントを実施していたところ、当該タイトルの商標権者から、①イベントの即時中止、②当該タイトルの有償使用許諾契約の締結、③無断使用期間分の損害賠償(60万円程度)を求める通告書が届きました。

3.検討

(1)商標権侵害のリスク
 商標権侵害に当たると、民事的には、①差止請求(商標法36条)、②損害賠償請求(民法709条)・不当利得返還請求(民法704条)、③信用回復措置請求(商標法39条が準用する特許法106条)ができ、これらとは別に、刑事事件となることもあります(商標法78条~85条)。

(2)商標権侵害について
 登録商標と同一又は類似の商標を指定商品又は指定役務(商標登録の際に指定された商品又は役務のこと)と同一又は類似の商品又は役務について使用する行為が商標権の侵害となります。
 商標権侵害に当たるか否かの判断において、商標の類否や商品・役務の類否が問題となるケースが多く見られます。
 商品・役務の類否は、取引の実情を考慮して、商品又は役務に標章を使用した場合に出所(商品・役務の提供主体)の混同が生じるか否かによって判断がなされています。また、商標の類否は、外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(商標から生じる意味)の類似性の検討に加え、取引の実情を考慮して、総合的に出所混同のおそれがあるかどうかを基準に判断がなされています。

(3)チェックポイント
 商標権侵害を主張された場合、まずは、①商標権者か否か、②商標登録の内容、③出所混同の有無(商標の同一性・類似性、商品・役務の同一性・類似性)を検討することになります。説例では、これらを充たしそうです。
 しかし、諦めるのはまだ早いです。④商標権の効力が及ばない範囲での使用か否か(自己の氏名、商品・役務の普通名称・産地・品質等の内容を普通に用いられる方法で使用するものか(商標法26条)、⑤登録無効の抗弁(無効理由が存在する場合、又は商標の普通名称化など後発的に無効理由を有するに至った場合(商標法39条で準用する特許法104条の3))、⑥商標的使用の有無(自他商品識別機能を発揮する態様での使用か否か)、⑦先使用権の有無(商標法32条)などの観点からのチェックも必要です。説例ではこれらの観点からの主張によって請求を封じました。
 とはいえ、個別の判断は難しいものがあります。商標権侵害のリスクを考えれば、すぐに専門家に相談できる体制を整えておくのが望ましいでしょう。

4.おわりに

 商標権侵害に当たる場合、損害賠償だけでなく、資材の廃棄や企画自体の中止に至るおそれがあります。そのようなことになれば、それまでの準備が水の泡です。
 そもそも、紛争はそれ自体が業務の混乱を招きます。したがって、事前に回避することが極めて重要です。登録商標は特許庁のサイトでの検索が可能ですので、商標権侵害は比較的容易に避けることができます。
 日頃から知的財産権に注意しながら、斬新で楽しいイベントを企画しましょう!

マリカー訴訟の判決概要

1. 訴訟の概要

 任天堂株式会社(以下「任天堂」といいます。)が株式会社マリカー(訴訟中に商号変更・現商号:株式会社MARIモビリティ開発(以下「MARIモビリティ」といいます。))に対し、不正競争防止法等に基づき、「マリカー」という名称、スーパーマリオ等のゲームキャラクターのコスプレ衣装及び「maricar」等の文字を含むドメイン名の使用差止並びに損害賠償を求めていた裁判(以下「マリカー訴訟」といいます。)で、東京地方裁判所は、2018年9月27日、「マリカー」という標章やキャラクターのコスプレ衣装がMARIモビリティの需要者の間で、任天堂の商品等表示として広く知られていることを認定した上で、MARIモビリティに対し、標章、コスプレ衣装及びドメイン名の使用禁止、これらの標章や衣装を着用している人物が撮影されている動画の削除、損害賠償を命じました。

2. 判決の概要

 マリカー訴訟では、任天堂の「マリオカート」の略称である「マリカー」が同社の商品等表示として広く認識されていると認めた他、「マリオカート」シリーズに登場するゲームキャラクター「マリオ」、「ルイージ」、「クッパ」及び「ヨッシー」についても、任天堂の商品等表示であり、需要者間で広く認識されていると認定しました。その上で、MARIモビリティが公道カートのレンタルにあたり顧客に貸与という形でキャラクターのコスチュームを使用させる行為や従業員にコスチュームを着用させる行為がこれらのキャラクターを想起させ、任天堂の営業との間で混同を生じさせるとして、MARIモビリティが営業上の施設及び活動でこれらのコスチュームを使用することを禁止しています。

3. 最後に

 その他にも、異なる商品・サービスである任天堂の商品(ゲームソフト)とMARIモビリティの公道カートのレンタル事業との間で混同のおそれがあるか、MARIモビリティが付した「注意、マリカーはゲーム『マリオカート』とは全く別物です」などのいわゆる打ち消し表示によって混同のおそれがなくなるか、MARIモビリティが保有する登録商標「マリカー」の抗弁の成否、MARIモビリティが任意に実施したアンケート結果についての評価、訴訟提起に係る報道がなされた後にMARIモビリティについてTwitterでなされた書き込みに関する評価等に関し、興味深い判断がなされており、今後の訴状実務にも大いに参考になるものです。
 なお、本件は、MARIモビリティが知財高等裁判所に控訴しており、今後控訴審の判断も注目されるところです。

画像のリツイートが著作権侵害になる!

 2020年7月21日、最高裁判所が注目すべき判断を示しました。

1.事案の概要

 写真家の男性が、自身のウェブサイトに、自身の氏名や著作権を示す「ⓒ」マークを付した上で、自らが撮影した写真の画像を掲載したところ、この画像がツイッターに無断転載され、さらにリツイート(RT)されました。
 男性は、無断転載者、RT者が男性の著作権・著作者人格権を侵害するとして、これらの者の発信者情報の開示を求め、ツイッター社を訴えました。
 ツイッターのシステム上、タイムラインに画像を投稿すると、投稿者の意図とは無関係に、画像の上下が自動的にトリミングされ、この事案では男性の氏名等がカットされました。

2.争点

 このような投稿者の意図によらないトリミングが著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)を侵害するか否かが争われました。

3.裁判所の判断

 知財高裁は、トリミングについて著作者人格権の侵害を認め、RTした者についても発信者情報の開示を命じました。
 最高裁も、ツイッターのシステムによるものであっても、RT者はかかるシステムを利用してRTを行っており、画像の著作者名がカットされた状態で表示されたのはRT者の行為の結果であるとして、知財高裁の判断を維持しました。

4.まとめ

 今回の判断により、ツイッターで画像付き投稿をRTする場合は、その画像の著作権の有無等に注意する必要があります。
 画像付き投稿のRTにより著作権侵害を指摘された場合には、速やかに削除するようにしましょう。

単色の色彩のみからなる商標の識別力

知財高裁令和2年3月11日判決(金判1597号44頁)

1.事案の概要

 全国の賃貸、分譲売買、中古売買等の不動産情報を取り扱う不動産総合ポータルサイト「LIFULL HOME‘S(ライフルホームズ)」(以下「原告ウェブサイト」という。)が、同ウェブサイトで使用している橙色に関し、不動産総合ポータルサイトでは「SUUMO」は緑色、「いい部屋ネット」は赤色、「O-uccino」はピンク色、「ヤフー不動産」は赤色、「アパマンショップ」は濃青色、「athome」は紅赤色という形で棲み分けがなされており、不動産総合ポータルサイトに接する取引者、需要者は、商標登録出願に係る橙色によって、原告のウェブサイトと即座に認識、理解することができるとして、橙色の色彩について自他役務識別力を有している、またウェブサイトで広く使用された結果、使用による識別力を獲得したとして、特許庁がなした拒絶審決の取消を求めた事案です。

2.特許庁の審決

 特許庁は、①本願商標は、橙色の色彩のみからなる商標であるところ、本 願の指定役務との関係においては、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識されるものであり、また、本願商標と近似する色彩が、請求人(原告)以外の者によって、ウェブサイトに使用されていることからすれば、何人もその使用を欲するといい得るものであり、これを一私人に独占させることは妥当ではない、②原告による本願商標の使用により識別力を獲得したものと認められないとして、本願商標は商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標)に該当するから、商標登録を受けることができないと判断しました。

3.知財高裁の判断

 本件において、本件商標が本願商標の商標法3条1項6号に該当するか、仮に該当する場合でも広く使用されたことにより識別力を獲得したか(同法3条2項)が争われました。

(1)3条1項6号該当性について

 知財高裁は、
①住宅やマンションなどの不動産物件の購入、賃借等を検討している一般の消費者は、ポータルサイトで必要な情報に関する検索を行い、その検索結果に基づいて、不動産業者等に対し、掲載物件についての問合せをしたり、不動産業者等から紹介を受けるなどして、不動産 取引を行うのが通常である、

②本願商標は橙色の単色の色彩のみからなる商標であるところ、橙色は「赤みを帯びた黄色。オレンジいろ。」であり、JISの色彩規格にも例示されていることからすると、特異な色彩であるとはいえない、

③橙色は広告やウェブサイトのデザインにおいて、前向きで活力のある印象を与える色彩として、一般に利用されているものと認められる、

④不動産業者のウェブサイトには、ロゴマーク、その他の文字、枠、アイコン等の図形、背景等を装飾する色彩として橙色が普通に使用されていることが認められる、

⑤原告ウェブサイトのトップページにおいても最上部左に位置する図形と「LIFULL HOME’S」の文字によって構成されたロゴマーク、その他の文字、白抜きの文字及びクリックするボタンの背景や図形、キャラクターの絵、バナー等の色彩として、本願商標の橙色が使用されているが、これらの文字、図形等から分離して本願商標の橙色のみが使用されているとはいえない

⑥以上を総合すると、原告ウェブサイトに接した需要者においては、 本願商標の橙色はウェブサイトの文字、アイコンの図形、背景等を装飾する色彩として使用されているものと認識するにとどまり、本願商標の橙色のみが独立して、原告の業務に係る役務を表示するものとして認識するものと認めることはできないので、3条1項6号に該当すると判断しました。

(2)使用による識別力の獲得について

 知財高裁は、
①本願商標の橙色は特異な色彩であるとはいえない

②橙色は、広告やウェブサイト のデザインにおいて、前向きで活力のある印象を与える色彩として一般に利用されており、不動産の売買、賃貸の仲介等の不動産業者のウェブサイトにおいても、ロゴマーク、その他の文字、枠、アイコン等の図形、背景 等を装飾する色彩として普通に使用されている

③原告ウェブサイトにおける本願商標の橙色の使用態様は、ロゴマーク、その他の文字、白抜きの文字及びクリックするボタンの背景や図形、キャラクターの絵、バナー等の色彩として本願商標の橙色が使用されているが、これらの文字、図形等から分離して使用されていたものといえない

④以上に鑑みると、原告による原告ウェブサ イトにおける本願商標の使用の結果、本件審決時において、本願商標の橙色のみが独立して、原告の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないと判断し、3条2項の適用も否定しました。

4.コメント

(1)平成26年商標法改正(平成27年4月1日から施行)により、色彩のみからなる商標(色彩商標)について、商標登録することができるようになりました。

(2) 商標審査基準での取扱い
 色彩のみからなる商標は、原則として、商第3条第1項第2号、同項第3号又は同項第6号に該当することになります。したがって、色彩のみからなる商標が登録されるためには、色彩が使用された結果、当該色彩が独立して(図 形や文字等と分離して)その商品又は役務の需要者の間で特定の者の出所表示として認識されていることが必要となります。
 この使用により識別力を有するに至ったか否かについての判断は、商第3条第2項に関する商標審査基準に従って行うこととなりますが、色彩のみからなる商標の性質上、以下の点が留意されます。

A 出願商標と使用商標の同一性の判断
 使用により識別力を有するに至った商標として認められるのは、出願商標及び指定商品又は指定役務と、使用されている商標(以下「使用商標」という。)及び商品又は役務とが同一の場合に限られるとするのが原則です。
 この点に関し、色彩のみからなる商標の使用の証拠は、他の文字や図形等とともに色彩が使用されているものが多いと考えられるところ、出願商標と使用商標との同一性については以下のとおり取り扱われます。

①提出された証拠が他の文字や図形等とともに色彩が使用されているものである場合、原則的にはそのような証拠のみに基づき、当該色彩が使用により識別力を有するに至った商標であると認めることはできない。

②ただし、使用されている色彩と出願商標とが同一の色彩であって、例えば以下の証拠が提出された場合には、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として、使用による識別力の獲得の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る色彩部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断がなされます。

i) 包装紙又は看板等の大部分を当該色彩のみが占めている場合や無彩色を地色として当該色彩のみを使用して地模様を構成している場合等、明らかに当該色彩が需要者に強い印象を与えるような態様で使用されていると認められる証拠
ii) 多様な態様(文字・図形や他の色彩等の組合せ)をとりつつも当該色彩を常にアクセントカラー等として使用している証拠
iii)需要者が当該色彩をもって何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、需要者に対するアンケート調査結果)

B 商標の構成態様や商取引の実情の考慮
ⅰ)商標の構成態様
 色彩のみからなる商標の構成(単一の色彩からなるものか複数の色彩の組み合わせからなるものか、また、複数の色彩の組合せである場合に色彩の組合せの方向指定がされているか否か等)について考慮する。
ⅱ)商取引の実情
 指定商品又は指定役務を取り扱う業界の市場特性について出願人から主張があった場合には考慮する。例えば、参入企業数(寡占業界か否か)や当該業界における色彩の使用状況(多種多様な色彩が一般的に使用される商品・役務であるか否か、等)等の事実を考慮する。

 本件では、本願商標が橙色の単色であるため自他役務の識別力がないとして商標法3条1項6号に該当する旨判断したものと解されます。
 このような単色の色彩は、世間一般的に使用されるもので、特定の事業者の業務に係る役務を表示するとは認められません。本件でも、様々な場面で多くの人によって使用されていることを考慮し、特定の私人が独占するのは相当でないと考え、商標法3条1項6号に該当し、かつ使用による識別力の獲得を否定したものであり、妥当な判断であると思われます。

釣りゲータウン事件

知財高裁平成24年8月8日判決(平成24年(ネ)第10027号、判時2165号42頁)
東京地裁平成24年2月23日判決(平成21年(ワ)34012号)

1.事案の概要

 携帯電話向け及びパソコン向けのインターネット・ウエブサイト「GREE」を運営する原告(グリー株式会社)が、同じく携帯電話等向けのインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営する被告1(株式会社デイー・エヌ・エー)及びゲームソフトの企画制作、製造販売等を業とする被告2(株式会社ORSO)に対し、被告1及び2が共同で製作し、携帯電話向けのモバゲータウンにおいて配信した「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)が、原告の釣りゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)の著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権の侵害である、ウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは不正競争防止法2条1項1号の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たる、YらによるY作品の製作・公衆送信がXの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たると主張し、Y作品の公衆送信の差止及びウェブサイトからのY作品の抹消、Y影像の抹消、9億4020万円の損害賠償、謝罪広告を求めて訴えた事案である。

2.一審東京地裁の判断

 一審東京地裁は、以下の理由により、Y作品の「魚の引き寄せ画面」はX作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものであり、X作品に係るXの著作権及び著作者人格権を侵害すると判断し、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトからの抹消、約2億3500万円の損害賠償を命じた。
 「携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面は、釣り針に掛かった魚をユーザーが釣り糸を巻くなどの操作をして引き寄せる過程を影像的に表現した部分であるところ、この画面の描き方については様々な選択肢が考えられる。
 原告作品の

・水中に三重の同心円を大きく描き、
・釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ、
・魚を引き寄せるタイミングを、魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくする

という表現は、原告作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり、この点に原告作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる。
 他方、被告作品の魚の引き寄せ画面には原告作品と相違する点はあるものの、原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的特徴といえる

・水面上を捨象して、水中のみを真横から水平方向の視点で描いている点
・水中の中央に、三重の同心円を大きく描いている点
・水中の魚を黒い魚影で表示し、魚影が水中全体を動き回るようにし、水中の背景は全体に薄暗い青系統の色で統一し、水底と岩陰のみを配置した点
・魚を引き寄せるタイミングを、魚影が同心円の一定の位置に来たときに決定キーを押すと魚を引き寄せやすくするようにした点

の同一性は被告作品において維持されている。
 その余のY作品の主要な画面変遷についてはありふれた表現であるとして著作権侵害を否定し、不正競争防止法違反及び不法行為の主張も認めなかった。

 原告及び被告らは、この判決を不服として双方控訴した。

3.控訴審知財高裁の判断

 二審知財高裁は、以下の理由により、「魚の引き寄せ画面」に係る一審原告の著作権及び著作者人格権の侵害を否定し、一審原告のその余の請求も棄却した。

 「X作品及びY作品の魚の引き寄せ画面は、

・水面より上の様子が画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向に描かれている点
・水中の画像には画面のほぼ中央に中心からほぼ等間隔である三重の同心円と黒色の魚影及び釣り糸が描かれ、水中の画像の背景は水の色を含め全体的に青色で、下方に岩陰が描かれている点
・釣り針にかかった魚影は水中全体を動き回るが、背景の画像は静止している点

において共通する。
 しかしながら、そもそも釣りゲームにおいて、まず水中のみを描くこと、水中の画像に魚影、釣り糸及び岩陰を描くこと、水中の画像の配色が全体的に青色であることは、他の釣りゲームにも存在するものである上、実際の水中の影像と比較しても、ありふれた表現といわざるを得ない。
 次に、水中を真横から水平方向に描き、魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは、原告作品の特徴の1つでもあるが、このような手法で水中の様子を描くこと自体は、アイデアというべきものである。」

 最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、一審原告の上告を棄却する旨の決定を行い、知財高裁の判決が確定した。

4.コメント

 「著作物の翻案(著作権法 27 条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」であり、「思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は,既存の著作物の翻案に当たらない。」(江差追分事件最判平成13年6月28日(平成11年(受)第922号))

 上記最判を受け、裁判実務では、翻案権侵害の成否の判断において、①まず、同一性を有する部分がどこかを認定し、②同一性ある部分が創作的表現か否か(思想,感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分か否か)の判断を行い、③上記②が認められれば、次に表現上の本質的な特徴を直接感得しうるか否かを判断するのが一般的である。

 上記知財高裁が、「Y作品の魚の引き寄せ画面は,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分においてX作品の魚の引き寄せ画面と同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者がX作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,翻案に当たらない」と判断したのも、上記最判の判断を踏襲したものと解される。

 しかし、多数の釣りゲーム作品が先行する中で、1審判決が「X作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり,この点にX作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる」と認定した部分に関し、「アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分」と判断した点には批判も多い。

特許法102条1項に基づく損害額の計算式・証明責任等について基準を示した判例

知財高裁令和2年2月28日(判時2464号61頁)

1.事案の概要

 発明の名称を「美容器」とする各特許権を有する原告が被告に対し、被告が美容器の製造、譲渡等をすることが各特許権を侵害すると主張し、①特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造販売等の差止及び廃棄を求めるとともに、②民法709条に基づき、特許法102条1項に基づき推定された損害額の支払いを求めた事案である。

 本判決は、令和元年改正前特許法102条1項(現102条1項1号)に関し、

・「侵害の行為がなければ販売することができた物」の意義
・「単位数量当たりの利益の額」の意義及び証明責任
・特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分の場合の同項に基づく損害額の算定方法
・「実施の能力」の意義及びその証明責任
・「特許権者が販売することができない事情」の証明責任及び判断基準

を示した点に意義がある。

2.「侵害行為がなければ販売することができた物」及び「単位数量当たりの利益の額」の意義及び証明責任

(1)裁判所の判断
・「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品、すなわち、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者の製品であれば足りる
・「単位数量当たりの利益の額」は、特許権者の製品の売上高から、特許権者において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり、その主張立証責任は特許権者側にある

とそれぞれ判断した。

(2)コメント
 「侵害行為がなければ販売することができた物」に関しては、特許権者等の製品が特許発明の実施品である必要があるか(実施品必要説)、あるいは侵害品の競合品であれば足りるか(競合品十分説)という説が対立していたが、知財高裁は、競合品十分説を採用し、「侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者の製品であれば足りる」と判断したものである。

 また、「単位数量当たりの利益の額」に関し、限界利益説によるべきことを明確に示した。

3.同項に基づく損害額の算定方法

(1)裁判所の判断
 知財高裁は、特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分の場合において、①特許発明が、回転体、支持軸、軸受け部材及びハンドル等の部材から構成される美容器の、軸受け部材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であること、②特許発明を実施した特許権者の製品は、支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより、肌を摘み上げ、肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器であり、上記の特徴のある部分は同製品の一部分であること、③同製品のうち大きな顧客誘引力を有する部分は、ローリング部の構成であって、特許発明の特徴部分が特許権者の製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないことなど判示の事情の下では、特許発明を実施した特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分にすぎないとしても、特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるが、特徴部分の特許権者の製品における位置付け、特許権者の製品が特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力などの事情を総合考慮すると、事実上の推定が約6割覆滅され、これを限界利益から控除すべきであると判断した。

(2)コメント
 製品のうち特許発明に関係するのが一部分である場合について、原判決は、「製品全体の販売による利益を算定の根拠とした場合、本来認められる範囲を超える金額が算定されないことから、当該特許が製品の販売に寄与する度合い(寄与率)を適切に考慮して、損害賠償の範囲を適切に画する必要がある」と判断し、これを「寄与率」の問題として処理していた。

 これに対し、知財高裁は、製品のうち特許発明に関係するのが一部分である場合について、民法709条の因果関係の問題や同項但書の「販売することができないとする事情」の問題として考えるのではなく、特許法102条1項本文の「単位数量当たりの利益の額」の問題として考えるということを示したものである。

 そして、原判決が寄与率を10%と認定したのに対し、知財高裁は、一旦一審原告製品の単位数量当たりの利益額全体を特許権者の逸失利益額と事実上推定したうえで、特徴部分の特許権者の製品における位置付け、特許権者の製品が特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力などの事情を考慮して、かかる事実上の推定が約6割覆滅されると判断したものである。

4.「実施の能力」の意義

(1)裁判所の判断
 「実施の能力」は、潜在的な能力で足り、生産委託等の方法により、侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合は実施の能力があるというべきであり、その主張立証責任は特許権者側にある。

(2)コメント
 実施の能力について、現存能力説ではなく、潜在的能力説によるべきことを判断したものである。

5.「特許権者が販売することができないとする事情」の意義・判断基準・証明責任

(1)裁判所の判断
 「特許権者が販売することができないとする事情」は、侵害行為と特許権者の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい、例えば、①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性)、②市場における競合品の存在、③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当する。

 上記の事情及び同事情に相当する数量の主張立証責任は、侵害者側にある。

(2)コメント
 特許法102条2項の推定覆滅事由と同様に、102条1項について数量割合的な控除事情を例示したものである。

完成品に組み込まれた部品の商標について商標権侵害罪が成立するとされた事例

最判平成12年2月24日(刑集54巻2号67頁)

1.事案の概要

 本件は、いわゆるパチスロ機を製造販売する会社の代表取締役である被告人が、同会社の従業員らと共謀の上、何ら権限がないのに、①シャープ株式会社(以下「シャープ」といいます。)が電子応用機械器具等を指定商品として商標登録を受けている「SHパチスロ機RP」(横書)と同一の商標(以下「本件商標」といいます。)を付した電子部品約1万個を、パチスロ機の主基板に取り付けて販売する目的で所持し、②右電子部品を取り付けたパチスロ機61台を販売して譲渡し、もって、シャープ株式会社の商標権を侵害したとして、商標法78違反の罪により起訴された事案です。

2.事実関係

 被告人らが、パチスロ機に組み込み販売する目的で他から入手したCPU(中央処理装置、以下「本件CPU」という。)には、被告人らが入手する前から何者かによってシャープの許諾を得ることなく本件商標が付されていました。被告人らは、シャープの許諾がないことを認識しながら、本件CPUをパチスロ機の電子制御をつかさどる構成部分である主基板に、他の電子部品とともに半田付けするなどして装着した上、その主基板を、透明又は半透 明のプラスチックケースで覆い、パチスロ機の本体とは別に保管していました。本件CPUは、主基板に装着された後も、元の外観及び形態を保っており、それに付された本件商標は、ケースを通してもこれを視認することができる状況にありました。

 パチスロ機は、中間の販売業者を通じてパチンコ店に販売されましたが、その際、本体と主基板が別々に配送された後、パチンコ店で本体内の最上部に主基板が差し込まれるなどして組み立てられ設置されていました。

 主基板は、パチスロ機の本体とは別にパチンコ店に備え置く補修用部品としても販売され、パチスロ機の主基板が故障した場合にこれと交換されることもありました。

主基板に装着された本件CPU及びそれに付された本件商標は、パチスロ機の外観上は視認することができませんが、以上のようなパチスロ機の流通過程において、中間の販売業者やパチンコ店関係者に視認される可能性がありました。

3.最高裁の判断

 「本件商標は、本件CPUが主基板に装着され、 その主基板がパチスロ機に取り付けられた後であっても、なお本件CPUについての商品識別機能を保持していたものと認められるから、前記起訴に係る被告人らの各行為について、商標法78条の商標権侵害の罪が成立するとした原判決の判断は正当である。」

 以上により、最高裁が被告人らの上告を棄却し、大阪高裁が言い渡した懲役6月・執行猶予2年の判決が確定しました。

4.コメント

 他人の登録商標と同一の商標が付されていたのは、パチスロ機の部品であるCPUであり、パチスロ機に組み込まれることによってCPUは商品として独立性を失うため、これに付された商標は商品識別機能を果たさないのではないかが問題となりました。

 一審大阪地裁は、CPUはパチスロ機に組み込まれることにより、商品としての独立性を失い、これに残存する標章は商標法上保護されるべき商品識別機能を失うとして、被告人らに対し、無罪を言い渡しました。

 これに対し、大阪高裁は、

商標の付された商品が、部品として完成品に組み込 まれた場合、その部品に付された商標を保護する必要性がなくなるか否かは、商標法が商標権者、取引関係者及び需要者の利益を守るため商標の有する出所表示機能、自他商品識別機能等の諸機能を保護しようとしていることにかんがみると、完成品の流通過程において、当該部品に付された商標が、その部品の商標として右のような機能を保持していると認められるか否かによると解すべきである」とした上で、

部品に付された商標が、部品の商標としての機能を保持しているか否かの判断基準として、

①商標の付された商品が部品として完成品に組み込まれた後も、その部品が元の商品としての形態ないし外観を保っていて、右商標が部品の商標として認識される状態にあること

②右部品及び商標が完成品の流通過程において、取引関係者や需要者に視認される可能性があること

という2つの基準を掲げ、被告人らの商標権侵害を肯定しました。

 最高裁は、大阪高裁が示した判断基準も含め、原判決を肯定したものと解されます。

パブリシティ権

知財高裁令和2年2月20日判決(平成31年(ネ)第10033号)

1.事案の概要

 本件は、ファッションデザイナーである原告ジル・スチュアート(以下「原告ジル」といいます。)及びそのマネジメント会社である原告会社が、長期間にわたり契約関係にあった被告に対し、被告のウェブサイトに原告ジルの氏名及び肖像写真を掲載した行為は原告ジルのパブリシティ権を侵害するなどと主張し、原告のパブリシティ権侵害に係る使用料相当損害額として6億3008万4000円の支払い等を求めた事案です。

2.一審東京地裁の判断

 一審東京地裁は、「原告ジルは、平成5年以降毎年ューヨーク・コレクションに出展している世界的に有名なファッションデ ザイナーであって、原告ジルの氏名、肖像写真等が、単独又は被告や他のライセンシーの商品との関連で、我が国の新聞や雑誌等で多数回にわたり取り上げられ、服飾のみならず、化粧品、陶器、時計など多くの種類の商 5 品が本件ブランドの商品として販売されていることに照らすと、原告ジルの肖像等は、被告商品を含むファッション関係の商品について、その販売等を促進する顧客吸引力を有するものと認められる。したがって、原告ジルは、これらの商品に関し、その顧客吸引力を排他 的に利用する権利であるパブリシティ権を有する」とし、被告が原告らとの契約終了後に、被告のウェブサイトに原告の氏名等を表示していた行為は原告ジルのパブリシティ権を侵害すると判断しました。

 そして、使用料相当額の損害に関し、当事者間のサービス契約の終了前には原告ジルに係る表示の使用が無償で許諾されており、使用料相当額の算定において参照し得る合意等が存在しないこと、原告らが同様の表示について他の第三者に使用許諾した事例なども存在しないことなどの事情が認められ、損害額の立証が事案の性質上極めて困難であるので、本件の諸事情等を考慮して、100万円と認定するのが相当であると判断しました。

3.知財高裁の判断

 知財高裁も同様に、原告ジルの氏名及び肖像写真にパブリシティ権を認め、被告のウェブサイトでの使用を同権利の侵害と認めた上で、使用料相当額の損害について、次の理由により東京地裁同様に100万円が相当であると判断しました。

①一審原告ジルの世界的な名声については一定の留保を付けざるを得ないのに比して、日本国内での名声(特に被告商品の需要者 層におけるもの)はそれなりに高いと認められる。もっとも、本件ブランドの日本での立上げ以前から一審原告ジルが日本の需要者層に広く知られていたことを示す証拠は見当たらないのに対し、 それ以降は一審被告を先駆けとする各ライセンシーが本件ブランドのビジネスに深く関わってきたことからすれば、日本における一審原告ジルの名声には、各ライセンシーによるマーケティングの成果という側面が多分にある。

②一審原告ジルが「世界的に有名な」ファッションデザイナーであるとの名声が日本において形成されるについては、各ライセンシーの寄与、中でもその先駆けである一審被告の寄与が相当程度に大きかったと認められる。

③一審原告ジルの肖像等が顧客誘引力を有し同人にはパブリシティ権が認められるとしても、それらは、いわゆる超一流のファッションデザイナーのものと同列ではないし、パブリシティ権の形成に当たって 一審被告がライセンシーとして寄与してきたという経緯を考慮すべきである。

④一審原告ジルの我が国における認知度は、それなりに高いことからすると、そ の形成に当たって一審被告の貢献が大きいことを考慮しても、パブリシティ権侵害に対する損害賠償の額を余りに少額とすることもまた相当ではないというべきである。

⑤以上を踏まえると、一審原告ジルのパブリシティ侵害によって生じた使用料相当損害の額は、原判決が説示するとおり100万円と評価するのが相当である。

4.コメント

 日本の法律において、パブリシティ権について明文の規定はありませんが、最判平成24年2月2日(民集66巻2号89頁)(ピンク・レディー事件)において、パブリシティ権とは何かについて言及し、最高裁判所の判例で初めて権利として承認されました。

最高裁の判断内容は以下のとおりです。

 「人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(氏名につき、最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁、肖像につき、最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁、最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁各参照)。そして、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下、「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。」

 上記最高裁の判示から、パブリシティ権とは「商品の販売等を促進する顧客吸引力を排他的に利用する権利」であるといえます。

 ジル・スチュアートの事件でも、東京地裁及び知財高裁は、いずれもファッションデザイナーであるジル・スチュアートの氏名及び肖像についてパブリシティ権を認めましたが、ジルの日本での名声が被告らライセンシーのマーケティング効果によることが大きいこと等を踏まえ、その使用料相当額の損害としては100万円が相当である旨の判断がなされたものです。

知的財産にまつわるトラブルを未然に防止するための対策

1.知的財産権の取得に関する事前チェック

 発明や意匠などの知的財産は、模倣が容易で、不特定多数が同時に使用することが可能であるという性質を有するため、知的財産制度は、創作者の創作意欲を保持・向上させるため、様々な形で保護を行い、規制をかけています。
 そのため、意図的に侵害しようとしなくとも、知的財産権を侵害してしまうケースが後を絶ちません。

知的財産権を取得する場面では、

・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか

等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。

 このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。

 また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。

 知的財産権にまつわるトラブルを未然に防止するため、知的財産権の取得に関し、知的財産権に精通した弁護士に相談できる体制を整えておかれることをおすすめします。

2.知的財産に関する契約書の整備と定期的なバージョンアップ

 知的財産権にまつわるトラブルを未然に防止するための重要な対策は、社内に知的財産に関する契約書を整備し、かつ、定期的にバージョンアップすることです。

 整備すべき契約書としては、

・秘密保持契約書
・ソフトウエア等の開発委託契約書
・共同研究開発契約書
・共同出願契約書
・特許・実用新案・意匠の実施許諾契約書
・商標使用許諾契約書
・著作権利用許諾契約書

といったものが挙げられます。

 これらが整備されていないようであれば、知的財産にまつわるトラブルが生じるリスクは高いと思われます。
社内の契約書を確認し、必要な契約書が整備できているか確認してください。

 また、知的財産の分野は、法改正や新判例が頻出しています。
 せっかく整備した契約書も、古くなってしまえばリスクの種となります。

 整備した契約書は定期的に点検し、バージョンアップできる体制を整えておかれることをおすすめします。

知的財産に関する紛争等について弁護士に相談するタイミング

 知的財産に関する紛争等について弁護士に相談するベストのタイミングは、今、このサイトをお読みいただいているときです。

 ただ、これだけでは大まかすぎるかもしれませんので、もっと具体的な場面をお示しすると、

①自社の特許権・意匠権・著作権・商標権を侵害された場合
②特許権・意匠権・著作権・商標権を侵害されたと訴えられた場合
③特許権・意匠権・著作権・商標権等が絡む契約を結ぶ場合

の3つの場面です。

①自社の特許権・意匠権・著作権・商標権を侵害された場合

 発明、意匠、商標、著作物は、模倣が容易で、不特定多数の者が同時に侵害品を製造販売することが可能ですので、侵害を放置していると、自社の売上低下、ブランド価値の低下等につながる危険性があります。
 直ちに証拠を保全して、侵害者に対し警告書を発する等の権利をまもるための戦いを開始しなければなりません。
 いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、どのよう(How)に侵害しているのかがわかる証拠を集め、それが知的財産権の侵害であると言える理由(Why)を法的に整理する必要があります。

②特許権・意匠権・著作権・商標権を侵害されたと訴えられた場合

 発明、意匠、商標や著作物はは、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうケースが後を絶ちません。
 事例でも挙げましたが、一般的な名称と思われる言葉を用いたプログラムを作ったところ、商標権侵害を主張されたという事案もありました。
 もっとも、発明、意匠、イラスト、写真などの著作物や商標が権利として保護されるためには、法律の要件を満たす必要があります。
 上記ケースでも、精緻な法的主張を行うことで、最終的にはトラブルを回避することができました。
 慌てず、素人判断をせず、落ち着いて弁護士に相談してください。

③特許権・意匠権・著作権・商標権等が絡む契約を結ぶ場合

 知的財産権が絡む契約を結ぶ場面では、

・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか

等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。

 このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。

 また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。

 知的財産権にまつわるトラブルを未然に防止するため、知的財産権の取得に関し、知的財産権に精通した弁護士に相談できる体制を整えておかれることをおすすめします。

知的財産についての弁護士の使い方ベスト4と費用の目安

 知的財産についての弁護士の使い方ベスト4をご紹介します。

①知的財産権を侵害することがないかという事前チェック
②知的財産権を侵害された場合・請求された場合の交渉・訴訟対応
③知的財産権に関する契約書の作成・リーガルチェック
④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施

 順番に見ていきましょう。

①知的財産権を侵害することがないかという事前チェック

 知的財産は情報ですので、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうリスクをはらんでいます。
 例えば、チラシを作成しようとする場合、ネット上から拾った画像や写真を使うと著作権侵害となる可能性が高いです。
 著作権を侵害すると、差止請求が認められて企画がボツになってしまったり、刑事罰を受けたりするリスクもあります。

 写真・画像・言葉・形・アイディアといった知的創造物や営業上の標識を用いようとする場面では、それにより知的財産権を侵害する可能性があるという意識をもっていただき、弁護士の事前チェックを受けていただくというのが、知的財産についての弁護士の使い方の基本です。

<費用の目安>
1時間あたり2万円(税別)

②知的財産権を侵害された場合・請求された場合の交渉・訴訟対応

 突然、内容証明郵便が届いた。
 そこには知的財産権を侵害したと記載されている。

 そんな場合であっても、慌てず、落ち着いて、弁護士に相談してください。
 このような場面こそ弁護士の腕の見せ所です。

 事実の冷静な分析と精緻な法的主張によりトラブルを回避することができるケースもあります。
 また、残念ながら知的財産権を侵害してしまっていた場合であっても、誠意ある対応を通じて損害を最小限に抑えるべく、一緒に尽力します。

<費用の目安>
●内容証明郵便の作成
15万円(税別)~

●輸入差止め(水際対策)
30万円(税別)~

●事件(交渉・保全・訴訟)の着手金・報酬金
着手金(受任時にお支払いいただく費用。ファイトマネーです。)は、
・侵害された場合:相手への請求額
・請求された場合:相手からの請求額
を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。
請求額が、
・300万以下の場合、その8%
・300万を超え3000万以下の場合、その5%+9万円
・3000万を超え3億円以下の場合、その3%+69万円
・3億円を超える場合、その2%+369万円

報酬金(事件の結果の程度に応じてお支払いいただく費用。成功報酬です。)は、
・侵害された場合:相手から得た額
・請求された場合:相手の請求を排除した額

を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。
得た額又は排除した額が、
・300万以下の場合、その16%
・300万を超え3000万以下の場合、その10%+18万円
・3000万を超え3億円以下の場合、その6%+138万円
・3億円を超える場合、その4%+738万円

③知的財産権に関する契約書の作成・リーガルチェック

 知的財産権が絡む契約を結ぶ場面では、

・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか

等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。

 このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。
また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。

 知的財産権に関する契約書を作成する場面こそ、知的財産権にまつわるトラブルを未然に防止するため、弁護士に書面作成を依頼したり、リーガルチェックを受けていただいたりする絶好のチャンスです。

<費用の目安>
●契約書の作成
・定型的なもの5万円(税別)~
・非定形なもの10万円(税別)~

●契約書のチェック
・定型的なもの3万円(税別)~
・非定形なもの5万円(税別)~

※対象となる権利の価値、契約目的、リスクの内容、納期等を踏まえてご提案させていただきます。

 なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、

・来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限
・年1回程度の研修が無料

に加え、高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックを無制限で対応することが可能です。

④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施

 知的財産権には、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうリスクがあります。
 これを防止するためには、知的財産権に関する社内の意識と理解を高めることが重要です。
 そのために有用なのが社員教育・社内研修です。

 知的財産に関する研修は、紛争の実態を知っている弁護士が適任ですので、研修の依頼も、知的財産についての弁護士の使い方としておすすめです。
 知的財産権の基本から最新判例の動向まで、幅広く対応することができます。

<費用の目安>
15万円(税別)~
※研修目的、時間、参加人数、開催場所等を踏まえてご提案させていただきます。

 なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、

・来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限
・高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックが無制限

に加え、年1回程度の研修を無料で実施することが可能です。

まとめ(弁護士へ相談する場合のメリット、したほうが良い点)

 これまでご説明したとおり、知的財産は価値のある情報ですので、その取扱いは慎重を期する必要があります。
 特に、

①知的財産権を侵害された場合
②知的財産権を侵害されたと主張されている場合
③知的財産権に関する契約を結ぶ場合

は必ず弁護士にご相談ください。

 相談だけで回避できるトラブルは多数あります。
 また、こじれる前に解決できれば、費用と時間を節約することができます。

 私達の経験上、相談しないメリット、相談しない方が良い場面というものはほとんど見当たりません。

 こんな段階で相談して良いのか、こんな段階だと遅すぎるのではと思わず、思い立った時点でぜひご相談ください。
 最善を尽くさせていただきます。

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