上場企業はコーポレートガバナンス・コードの見直しに対応する
東証の再編に伴うコーポレートガバナンス・コードの見直し
2021(令和3)年3月1日に施行された改正会社法327条の2により、上場企業に社外取締役の選任が義務づけられました。とはいえ、既にコーポレートガバナンス・コードにより2名以上の社外取締役の選任が求められていることもあり、この改正による影響はそれほど大きくありませんでした。
しかし、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場企業において、取締役会の1/3以上を独立社外取締役にすること、指名委員会・報酬委員委員会の過半数を独立社外取締役にすることが求められ、社外取締役の給源の確保が課題となっています。
約4割の企業が独立社外取締役1/3基準を未達成
大和総研によると、東証一部上場企業で独立社外取締役1/3基準を満たしている割合は次のとおりです。
監査役会設置会社 52%
監査等委員会設置会社 69%
指名委員会等設置会社 98%
そして、全ての東証一部上場企業が現状の取締役の総人数のまま1/3基準を達成するためには、約1300人の独立社外取締役が必要になると試算されているようです。
ここで、「社外取締役」と「独立社外取締役」との違いですが、独立社外取締役とは、会社法に定める社外取締役の要件を満たしたうえで、東証が定める以下の独立性基準(「上場管理等に関するガイドライン」Ⅲ5.(3)の2)を満たした取締役のことです。
<「上場管理等に関するガイドライン」Ⅲ5.(3)の2>
a 当該会社を主要な取引先とする者若しくはその業務執行者又は当該会社の主要な取引先若しくはその業務執行者
b 当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)
c 最近においてa又は前bに該当していた者
cの2 その就任の前10年以内のいずれかの時において次の(a)又は(b)に該当していた者
(a) 当該会社の親会社の業務執行者(業務執行者でない取締役を含み、社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、監査役を含む。)
(b) 当該会社の兄弟会社の業務執行者
d 次の(a)から(f)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者
(a) aから前cの2までに掲げる者
(b) 当該会社の会計参与(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含む。以下同じ。)
(c) 当該会社の子会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役又は会計参与を含む。)
(d) 当該会社の親会社の業務執行者(業務執行者でない取締役を含み、社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、監査役を含む。)
(e) 当該会社の兄弟会社の業務執行者
(f) 最近において(b)、(c)又は当該会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役を含む。)に該当していた者
ダイバーシティ(多様性)について
また、ダイバーシティ(多様性)について、見直し後のコーポレートガバナンス・コードでは、「ジェンダー、国際性、職歴、年齢」と「女性、外国人、中途採用者」が多様性の要素として記される予定です。
さらに、取締役会のダイバーシティだけでなく、「管理職への登用等、中核人材の登用等」として、会社全体での取り組みが求められる予定です。
「先ず隗より始めよ」の言葉どおり、ダイバーシティを会社全体に広めるためにも、まずもって役員のダイバーシティを推進することが必要不可欠です。
独立社外取締役・独立社外監査役のリフレッシュメント
独立社外取締役・独立社外監査役は、「独立」かつ「社外」であるからこそ、外部目線で忌憚のない意見が言え、それを通じて取締役会の議論を活性化させ、正しい緊張感を持続させるというメリットがあります。
他方、会社の理解を深めるためにはある程度の時間が必要です。もっとも、長期間化すると馴れ合いが生じ、上記メリットが損なわれてしまうことも指摘されています。
そこで、米英の例にならい、独立社外取締役・独立社外監査役のリフレッシュメントを企図し、定年や在任年数の設定が提案されています。
もっとも、デロイト トーマツ コンサルティングの調査では、定年や在任年数を設定していない企業が68%に上っているようです。
この点について、「コーポレートガバナンスに関する基本方針 ベスト・プラクティス・モデルの策定」(日本取締役協会)では、「指名諮問委員会は、再任時において独立社外取締役の在任期間が6年を超えるような場合には、再任の当否を特に慎重に検討する」と述べられており、この6年という数字が一つの目安として考えることもできそうです。
もちろん、形式的な任期にこだわり、良い人材を失ってしまうことは本末転倒ですので、上記メリットが持続できているか、過度な馴れ合いが生じていないかを実質的に判断していただくことが肝要です。
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