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改正旅館業法による、宿泊業(ホテル業、旅館業)におけるカスハラ対策のポイント

改正旅館業法の概要

これまで宿泊業においては宿泊拒否が認められるケースは極めて限定的でした。

しかし、令和5年6月7日、改正旅館業法が可決、成立し、同月14日公布されました。この改正旅館業法で画期的なのは、いわゆるカスタマーハラスメントに対する対応として、迷惑客の宿泊を拒む根拠規定が定められたことです。

改正旅館業法 第5条1項

営業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。

三 宿泊しようとする者が、営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求として厚生労働省令で定めるものを繰り返したとき。

この規定は、これまで、迷惑客について、旅館業の営業者が無制限に対応を強いられた場合に、本来提供すべきサービスが提供できず、旅館業法上求められる業務の遂行に支障を来すおそれがあったとの意見や、旅館、ホテルの労働組合からの迷惑客に対する宿泊拒否の根拠規定を求める意見を受けて設けられたものです(令和5年6月6日参議院厚生労働委員会における質疑参照)。

宿泊業に限らず、近時社会問題となっているカスタマーハラスメントに対しては、厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成するなど、国家レベルで意識のアップデートが図られています。今回の旅館業法5条1項3号の創設もそのような社会情勢を受けてのものといえます。

具体的な運用において重要となる、同号中の「厚生労働省令で定めるもの」の内容については、現在、改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会において検討が進められており、令和5年12月13日までの施行に間に合うよう、概ね令和5年秋頃を目途に取りまとめがなされる予定です。この点については、公表がされ次第、本ホームページでも紹介いたします。

現時点では、例えば、宿泊者が従業員を長時間にわたって拘束し、又は従業員に対する威圧的な言動や暴力的な行為をもって苦情の申出を行う場合、他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう求められる場合等が想定されているようですが(令和5年6月6日参議院厚生労働委員会質疑参照)、改正法における附帯決議において、厚生労働省令について「営業者による恣意的な運用がなされないよう明確かつ限定的な内容とするよう努めること」とされたことも踏まえると、類型的かつ具体的な規定が設けられることが期待されます。

改正内容における注意すべきポイント

宿泊業界において、今回の改正点は非常に喜ばしいことですが、注意も必要です。

それは以下の2点です。

改正旅館業法 第5条2項

営業者は、旅館業の公共性を踏まえ、かつ、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊を拒む場合には、前項各号のいずれかに該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、及び宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにするものとする。

このように、改正旅館業法5条1項3号に基づいて宿泊を拒否する場合には、「客観的な事実に基づいて」、「(宿泊拒否の)理由を丁寧に説明する」ことが求められます。

改正旅館業法附則 第3条2項

営業者(新旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者をいう。)は、当分の間、新旅館業法第5条第1項第1号又は第3号のいずれかに該当することを理由に宿泊(旅館業法第2条第5項に規定する宿泊をいう。次項において同じ。)を拒んだときは、厚生労働省令で定める方法により、その理由等を記録しておくものとする。

また、当分の間は、宿泊拒否の理由等を記録しておく必要もあります。

旅館業法において宿泊拒否が限定的なのは宿泊拒否による行き倒れや野宿を防止するという観点があること、宿泊業の有する公共性、不当な差別が許されないこと等に鑑みれば、上記の附帯決議がいうように、宿泊拒否の規定を恣意的に運用することが許されないことはいうまでもありません。

他方で、今回の改正の背景にあるカスタマーハラスメントによる従業員の疲弊、サービスへの悪影響は決して無視できません。

そのため、このような説明や記録化は、宿泊業を営んでおられる事業者様自身の正当性を証明し、身を守る上ではむしろ有用といえそうです。

当事務所のサポート内容

当事務所では、これまでも多数のカスタマーハラスメント対応の実績があり、

・カスタマーハラスメント該当性の判断

・カスタマーハラスメントが生じた際のヒアリングや記録化

・カスタマーハラスメントが生じた際の事業者様の対応へのアドバイス

等を行ってきました。

当事務所では、京都総合法律事務所「クレームガード」をご用意し、カスタマーハラスメントに対して継続的にサポートさせていただいており、このような実績に基づく知見やノウハウを活かし、今回の改正旅館業法の運用をサポートしたいと考えております。

 

京都総合法律事務所「クレームガード」の詳細はこちらをご覧ください。

クレーム、消費者トラブル

宿泊拒否時の対応についてご不安な点やご不明な点が生じた場合、また実際にトラブルが生じた場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。

執筆者:弁護士 前田宏樹

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