広告規制入門・景品表示法(景表法)編「優良誤認表示 その広告、措置命令の対象かも」
「優良誤認表示 その広告、措置命令の対象かも」
新型コロナウイルス対策を標榜した商品に対し、消費者庁の厳しい目が向けられています。2021年3月だけで、新型コロナウイルス対策を謳う広告について、景品表示法に基づく消費者庁の措置命令や行政指導が12社に発せられました。
景品表示法とはどのような法律でしょうか?
一言でいえば、景品と表示を規制する法律です。
なぜそのような法律があるかというと、広告・宣伝には誇張がつきものですが、その誇張も限度を超えると一般消費者の選択を歪めてしまうからです。
景表法には景品に関する規制と表示に関する規制があり、表示に関する規制には次の三つがあります。
① 著しく優良であると誤認させる表示(優良誤認表示)
② 著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)
③ 内閣総理大臣が告示により指定した表示(指定告示)
今回は、このうち優良誤認表示についてご説明します。
冒頭でご紹介した新型コロナウイルス対策を標榜した商品に対する消費者庁の措置命令は、優良誤認表示が理由となっています。
優良誤認表示とは
優良誤認表示とは、
「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」
と定められています(景品表示法5条1号)。
優良誤認表示に当たるか否かは、業界の慣行や表示を行う事業者の認識により判断するのではなく、また、科学的・客観的にみて表示されたものよりも実際のものが上回っているか否かではなく、表示の受け手である一般消費者に「著しく優良」と認識されるか否か(誤認されるか否か)という観点から判断されます。
優良誤認表示で特に注意しなければならないのは、不実証広告規制があることです。
不実証広告規制とは、消費者庁長官等は、措置命令に関し、例えばダイエット効果を標ぼうする商品や器具等の効果や性能に関する表示が優良誤認表示に該当するか否かを判断するため必要があるときは、当該表示を行った事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、消費者庁長官等が当該表示について実際のものとは異なるものであること等の具体的な立証を行うまでもなく、当該表示は優良誤認表示とみなされる規制です。
この期間は15日間と定められており、資料の提出を求められてから準備しても間に合いません。
また、商品やサービスの効果を派手に強調した表示の後に、「あくまで個人の感想です。」というような強調効果による誤認を打ち消そうとする表示(打消し表示)をよく見かけますが、打消し表示として成功していないことが多いです。
打消し表示は、強調表示だけでは一般消費者が認識できない例外条件、制約条件等がある場合に例外的に使用されるべきものです。
そのため、強調表示と同様に目立つことが必要で、以下のような打消し表示はNGです。
<NG例>
強調表示と共に消費者が認識できない打消し表示(例:文字が小さい、背景と重なっている、配置場所が離れている)
強調表示と矛盾する打消し表示(例:「あくまで個人の感想です」は「個人の感想」を打ち消す表示であるが、そもそも強調している表示は「個人の感想」ではないため、強調表示と打消し表示が矛盾することになる)
表示内容に問題がある打消し表示(例:どの誤認を打ち消そうとしているのか不明瞭)
表示方法に問題がある打消し表示(例:表示時間が短い)
いかがでしたでしょうか。
今回の記事をまとめますと、優良誤認表示の攻略法は次のとおりです。
A) 強調する表示には合理性と客観性のある根拠を予め備えておく。
B) 強調表示によって生じる誤認は打消し表示できちんと防ぐ。
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セミナーでのQ&A例
Q.
ご紹介いただいた事例はHP が中心でしたが、景品表示法等が規制する媒体はHPが主体、という認識でよろしいでしょうか。HPのように不特定多数の人が閲覧できる媒体ではなく、対象者を限定して配信するメルマガ等において規制が及ぶケースはあるのでしょうか。
A.
対象者を限定して配信するメルマガも規制対象になります。
景品表示法2条4項が規制対象となる「表示」について、以下のとおり定めています。
「この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」
この条文にある「内閣総理大臣が指定するもの」について、下記の告示が示されています。
「法第二条第四項に規定する表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、次に掲げるものをいう。
一 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
三 ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告
四 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
五 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)」
ご質問の「対象者を限定して配信するメルマガ」については、この告示に定められている
「二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)」
に該当し、規制対象となります。
【関連ページ】
・広告規制入門・景品表示法編「有利誤認表示 その広告、課徴金の対象かも」
・広告規制入門・景品表示法編「指定表示 その広告、おとり広告かも」
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