広告規制入門・薬機法編 「その広告、逮捕されるかも」
「その広告、逮捕されるかも」
2020年7月、広告業界に衝撃が走る事件が起きました。大阪府警が、ある健康食品会社の「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」「ズタボロだった肝臓が半年で復活」等の広告について、薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に違反するとして、広告主や制作にかかわった大手広告代理店の従業員を逮捕しました。この事件では、最終的に罰金刑が科せられました。
薬機法は、誇大広告や未承認医薬品の広告を禁じ、罰則を設けています(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)。そして、この規制対象について、「何人も」と定めており、違法な広告に関わると誰でも逮捕されるリスクがあります。
とはいえ、これまで警察当局がこの「何人規制」を厳格に適用したケースは少なく、冒頭の事件は、実際に従業員が逮捕された事件として広告業界に激震が走りました。
そこで、広告に関わる皆様が逮捕されるような事態に陥らないよう、広告規制入門・薬機法編として、サプリメント等の健康食品の広告について、薬機法の観点から検討します。
検討する広告例
「最近話題のサプリメント
ヒアルロン酸配合で老化防止!
毎食後に1錠ずつ摂取で抗酸化作用を増強!」
この広告、薬機法違反はいくつあるでしょうか?
薬機法違反①
「ヒアルロン酸」は、医薬品的な効能効果を標榜すると薬機法違反です。
上記広告では、「老化防止」という医薬品的な効能効果を標榜していますので、NGです。
医薬品的な効能効果についてNG例とOK例は以下のとおりです。
<NG例>
①病気の治療又は予防を目的とする表現
②体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現
<OK例>
① 栄養補給(ただし、文脈によってはNG)
② 健康維持、美容
③ 健康増進(ただし、食品である旨を明示し、医薬品との誤認を防止する必要がある)
薬機法違反②
健康食品は、医薬品と誤解されるような摂取時期や用法用量を定めることはできません。
上記広告では、「毎食後に1錠ずつ摂取」という医薬品的な用法用量を定めていますので、NGです。
たとえば、「1日3カプセルが目安」であれば、製品に「食品」であることを明示しておけばOKです。
薬機法違反③
「抗酸化作用」は、医薬品的な効能効果の標榜であり、原則NGです。
ただし、栄養機能食品であれば、ビタミンCとビタミンEについて、「抗酸化」の機能表示ができます。
栄養機能食品は、各栄養成分の1日当たりの摂取目安量に含有される量が予め定められた範囲内であれば表示可能です。
いかがでしたか?全問正解できましたでしょうか?
繰り返しになりますが、薬機法は「何人規制」ですので、会社だけが処罰されるわけではなく、担当者も逮捕されたり、前科がついたりします。
皆様、くれぐれもご注意ください。
薬機法違反チェックリストをご紹介しますので、適宜ご活用いただき、少しでも疑問を感じれば、すぐにご相談ください。
薬機法違反チェックリスト
□ 「医薬品リスト」に該当する成分本質(原材料)を配合又は含有しないこと
□ 医薬品的な効能効果を標榜しないこと
□ アンプル形状など通常の食品としては流通しない形状を用いないこと
□ 医薬品的な用法用量の記載をしないこと
広告チェックサービスのご紹介
御社の広告が景品表示法や薬機法に抵触しないか、弁護士がチェックいたします。
電話やメールだけでなく、ZoomやChatworkでのアドバイスも可能です。
スポットでのご依頼
リスクチェック:1広告あたり2万7500円(税込み)
広告内容を検討し、景品表示法や薬機法に抵触する部分の指摘を行います。
※A4で8ページ以上の広告については別途ご相談
<オプション>
代替表現のご提案:+2万7500円(税込み)
継続的なご依頼
月額5万5000円(税込み)で月2広告までご対応
3広告目以降は1広告あたり2万2000円(税込み)でご対応
リスクチェックだけでなく代替表現も追加費用無しでご提案します。
広告数やページ数が多い場合はこちらの方がお得です。
セミナー
薬機法や景品表示法の勘所がわかるセミナーも実施しています。
過去のセミナーはこちら。
社内向けセミナーへのアレンジも行いますので、お気軽にお問合せください。
セミナーでのQ&A例
Q.
ご紹介いただいた事例はHP が中心でしたが、景品表示法等が規制する媒体はHPが主体、という認識でよろしいでしょうか。HPのように不特定多数の人が閲覧できる媒体ではなく、対象者を限定して配信するメルマガ等において規制が及ぶケースはあるのでしょうか。
A.
対象者を限定して配信するメルマガも規制対象になります。
景品表示法2条4項が規制対象となる「表示」について、以下のとおり定めています。
「この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。」
この条文にある「内閣総理大臣が指定するもの」について、下記の告示が示されています。
「法第二条第四項に規定する表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、次に掲げるものをいう。
一 商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示
二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
三 ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似する物による広告及び陳列物又は実演による広告
四 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
五 情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)」
ご質問の「対象者を限定して配信するメルマガ」については、この告示に定められている
「二 見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)」
に該当し、規制対象となります。
【関連ページ】
・広告規制入門・景品表示法編「優良誤認表示 その広告、措置命令の対象かも」
・広告規制入門・景品表示法編「有利誤認表示 その広告、課徴金の対象かも」
・広告規制入門・景品表示法編「指定表示 その広告、おとり広告かも」
京都総合法律事務所は、1976(昭和51)年の開所以来、京都で最初の「総合法律事務所」として、個人の皆さまからはもちろん、数多くの企業の皆さまからの幅広い分野にわたるご相談やご依頼に対応して参りました。経験豊富なベテランから元気あふれる若手まで総勢10名超の弁護士体制で、それぞれの持ち味を活かしたサポートをご提供いたします。