【解決事例】雇止めを不服として申し立てられた労働審判の解決をした例
ご相談のケース
1年契約のアルバイト従業員の契約を1回更新しましたが,日ごろの勤務態度が良くないので,2回目の更新はせず,雇止めをしました。それから1ヶ月ほどしたある日,雇止めが不当だという内容で,労働審判を起こされてしまいました……。
解決方法
労働審判は,雇い主や会社と従業員との間との個別の労働紛争について,原則として3回以内の裁判所での期日にて話し合いによる解決を試み,解決に至らない場合には,事案の実情に応じた労働審判という裁判所の判断が示されるという制度です。
しかし実際には,1回目の期日までに当事者双方の主張を出し尽くすことが求められ,2回目の期日では具体的な解決案の検討に入ることが一般的ですので,特に使用者側は,労働審判の実情を理解した上で,適切な準備で臨まなければなりません。
今回のご相談に対しては,問題となっている従業員が遅刻や早退を繰り返していることや,現にお客さまからクレームを繰り返して受けていたことのほか,前回の契約更新時に今後このようなことがないようにと注意していた事情を,1回目の期日に具体的に示した結果,一定の解決金を支払うことで合意退職による解決となりました。
担当弁護士の所感
契約期間を定めて雇い入れた,いわゆる有期雇用の従業員が契約の更新を希望している場合,雇い主や会社側で期間が満了したからという理由だけで契約の更新をしないという,いわゆる雇止めをしても,「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない」との理由で,雇止めが認められない場合があります。
ここ最近の人手不足の状況下では,雇止めをするにしても,相応の理由があることとは思いますが,今回の事例のように,お客さまからクレームを繰り返して受けていたことや,前回の契約更新時に今後このようなことがないようにと注意していた事情は,実際にそうした出来事があったことを後日に「証拠」として明らかにできなければ,もはやそういう事実が「なかった」のと同じように扱われてしまいます。
ご相談のケースでは,出勤簿から遅刻の事実は明らかにできたものの,お客さまからのクレームや前回の契約更新時の指導は「証拠」となるような書面が少なく,会社が雇止めをした理由を十分に証明できませんでした。そのため,雇止めが認められない可能性があり,元従業員側からは退職に応じるとしても,相当多額の解決金の支払いがなければ,話し合いによる解決には応じられないとの意向が示されました。これに対して当方からは,可能な限り,具体的で詳細な主張を行うことで裁判所の説得を試み,最終的には元従業員側が要求していた金額を半額以上減額した解決金額で退職の同意を得ることで,雇止めが認められなかった場合に多くみられる解決金額よりも有利な解決をはかることができました。
当事務所の特長
当事務所では,数多くの労働事件の経験を通じて,日々の企業法務において,どのような点が将来の紛争の火種となり,それに対してどのような対策を講じておくべきか,理論的かつ実務的なサポートをさせていただきます。就業規則の定め方はもとより,日常的な従業員に対する指導の方法のほか,ハラスメント問題への対策など,問題が生じる前の対策が必要です。京都の地において,企業側・使用者側の立場から労働事件・労使紛争に注力している当事務所は,様々な転ばぬ先の智恵をご用意しておりますので,是非ともご相談ください。
京都総合法律事務所は、1976(昭和51)年の開所以来、京都で最初の「総合法律事務所」として、個人の皆さまからはもちろん、数多くの企業の皆さまからの幅広い分野にわたるご相談やご依頼に対応して参りました。経験豊富なベテランから元気あふれる若手まで総勢10名超の弁護士体制で、それぞれの持ち味を活かしたサポートをご提供いたします。