企業のための風評被害・ネット炎上・誹謗中傷対策
1 ネット上の風評被害・ネット炎上・誹謗中傷と相談が増加している背景
「陰口」という言葉のとおり、面と向かって悪口や陰口を言う人はほとんどいませんよね。
ネット上の風評被害・ネット炎上・誹謗中傷と相談が増加している背景はシンプルです。自分の正体をさらさずに悪口や陰口が言えるからです。
ネットは、匿名性・直接性・容易性・即効性・独善性・拡散性・集団極性化といった性質を持っています。
このような性質により、陰に隠れて、直接、簡単に、瞬時に、独善的な思い込みに基づく効果的な悪口を、不特定多数に対して、発信することができます。
そして、悪口が悪口を呼び、集団リンチのような状況が生じ、ネット炎上となります。
2 書き込みが発生する主要な媒体について
風評被害・ネット炎上・誹謗中傷が起きる媒体は多種多様です。
例えば以下のものが挙げられます。
①各種動画サイト(YouTube、ニコニコ動画、FC2動画、dailymotion等)
②各種掲示板・口コミサイト・コピーサイト(2ちゃんねる、5ちゃんねる、爆サイ、マンションコミュニティ、ホストラブ、Yahoo!ファイナンス、Yahoo!知恵袋、Amazonレビュー、MILKCAFE、openwork、Lighthouse(旧・カイシャの評判)、転職会議、jpnumber、ログ速、mimizun、ホスティングサーバーで運用されている独自ドメインサイト等)
③Google関係(Google検索結果、Googleマップ、Googleマイビジネス、Googleサジェストキーワード、その他の検索エンジンサジェストワード(予測検索キーワード)
④SNS(Twitter、Instagram、Facebook等)
⑤各種ニュースサイト(読売新聞・朝日新聞・産経新聞等の新聞社サイト、ライブドアニュースのインターネットニュースサイト等)
⑥各種ブログ(ココログ、ライブドアブログ、FC2ブログ、楽天ブログ、アメーバブログ、はてなブックマーク等)
対象となる媒体によって削除方法や難易度が異なりますので、個別に検討して対策を講じることになります。
3 風評被害に対応する主な3つの方法
①自社で良いクチコミを集めてネガティブな投稿の比率を下げる
クチコミは悪いものばかりではありません。私達が日常生活で何らかのサービスを利用したり商品を選択したりする際、やはり頼りになるのはクチコミだと思います。
それはインターネットでも同じです。
他方で、インターネット上に無責任な投稿が溢れていることは世間の皆様もよくわかっています。
しかし、ネガティブな書き込みばかりですと、その情報が真実ではないかと疑心暗鬼になってしまいます。
ネガティブな書き込みへの有力な対策の一つが、ポジティブな書き込みを増やすことです。
自社のファンを増やし、良いクチコミやアンケートをウェブ上に掲載することで、ネガティブな投稿の比率を下げることができます。
この方法は一見地味で、即効性はありませんが、良いクチコミを集めるためには、自社のサービスや商品をお客様目線で見直す良いきっかけになり、中長期的には最も大きな効果をもたらすことが期待できます。
②風評被害対策業者を活用した逆SEO(自然検索)対策を行う
SISTRIX社の2020年7月公開のデータによりますと、検索順位別のクリック率は次のとおりです。
1位 28.5%
2位 15.7%
3位 11.0%
4位 8.0%
5位 7.2%
6位 5.1%
7位 4.0%
8位 3.2%
9位 2.8%
10位 2.5%
ここから言えることは、ネガティブな投稿を4位以下に下げることができれば10%もクリックされないということです。
この現象を利用し、自社のサイトの自然検索順位を上げるための施策を講じたり、新たにLPサイトを立ち上げたり、SNSを活用したりすることが考えられます。
Googleのアルゴリズムは頻繁にアップデートされますので、常にキャッチアップするためにはそれなりの費用がかかりますが、物理的に視界から消すという意味で有力な対策の一つです。
③弁護士に依頼してネガティブな投稿を削除する
そして、物理的に視界から消すという意味では最も効果的なのが、弁護士に依頼してネガティブな投稿を削除することです。
これが成功すると最大の効果を得ることができます。
もちろん、あらゆるネガティブ投稿を削除できるわけではなく、表現の自由との兼ね合いで高いハードルを超えねばなりませんが、まず検討すべき対策がこの方法です。
4 弁護士による解決例
弁護士による解決例は次のとおりです。
・発信者情報開示請求によりIPアドレスを取得し、投稿者の特定に至った事例
・投稿者に対し、任意の削除交渉に成功した事例
・投稿者に対し、損害賠償と謝罪を求め、成功した事例
5 風評被害対策で弁護士ができること
①法律相談
風評被害・ネット炎上・誹謗中傷に遭遇した場合、「3 風評被害に対応する主な3つの方法」でご説明した3つの対策の中で、まずはネガティブな投稿の削除に取り組みたいと考えられると思います。
そこで、風評被害・ネット炎上・誹謗中傷について、対象となるサイト等を拝見させていただき、削除が可能なのか、投稿者を特定するのか、損害賠償請求を行うのか等について作戦会議をさせていただきます。
②削除請求
法律相談の結果を踏まえ、サイト運営者や個人サイトに対し、削除を求める手続を行います。
③発信者情報開示請求
プロバイダに対し、誹謗中傷の投稿者を特定するための手続(発信者情報:住所・氏名・登録された電話番号等)の開示を求める手続を行います。
④損害賠償請求・刑事告訴
発信者情報開示請求等により投稿者を特定した上で、慰謝料等の損害賠償請求や刑事告訴を行います。
6 風評被害対策の弁護士費用
①法律相談
初回相談料:30分当たり5500円(税込)
②削除請求
11万円~(税込)
※裁判手続が必要となる場合は33万円~(税込)
③発信者情報開示請求
55万円~(税込)
④損害賠償請求・刑事告訴
着手金:11万円~(税込)
※裁判手続が必要となる場合や刑事告訴は33万円~(税込)
報酬金:得られた利益の最大17.6%(税込)
7 風評被害対策を弁護士に相談する必要性
「1 ネット上の風評被害・ネット炎上・誹謗中傷と相談が増加している背景」でご説明したとおり、ネット上の風評被害・ネット炎上・誹謗中傷と相談が増加している背景は、自分の正体をさらさずに悪口や陰口が言えることです。
逆に言えば、投稿者を表の世界に引きずり出すことが突破口になります。
また、ネットが有する即効性・拡散性・集団極性化による炎上を防止または早期鎮火させるためにも、できる限り素早く動くことが必要です。
風評被害・ネット炎上・誹謗中傷はいつ・どのようなタイミングで発生するかわかりません。風評被害・ネット炎上・誹謗中傷に備え、専門的知識を有した弁護士に直ぐに相談できる体制を整えておくことをおすすめします。
8 令和3年改正
最後に、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」(令和3年法律第27号)によって2022年中から始まる新たな制度についてご説明します。
①これまで
これまでは、誹謗中傷の投稿者を特定するために2回の裁判手続が必要でした。
しかも、開示に時間がかかっているうちにログが抹消されるという課題もあり、実際には泣き寝入りということもありました。
また、これまでは、ログイン時の情報しか保有していないプロバイダからはIPアドレスが開示されないこともありました。
②これから
発信者情報の開示請求を1つの手続で行うことを可能とする新たな手続が創設されました。この手続は「非訟手続」という裁判所の職権で迅速に行える手続として創設されましたので、これまでの手続に比べて迅速に開示されることが期待できます。
この手続にあわせて消去禁止命令の申立てを行うことにより、コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダに対して発信者情報を消去することを禁止する命令を出してもらうことも可能となりました。
また、今回の改正で、ログイン時の情報も開示対象とすることが明確になりましたので、ログイン時のIPアドレス等から発信者を特定することが期待できるようになりました。
風評被害・ネット炎上・誹謗中傷は現代社会の大きな闇であり、これらの改正を通じてより良い制度に育ち、いつの日か風評被害・ネット炎上・誹謗中傷から解放される社会が実現することを願っています。
風評被害・ネット炎上・誹謗中傷の対策につきましては、御社の課題、ご予算等をヒアリングさせていただき、それらを踏まえて最適と考えられる対策をご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。