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開催していない株主総会決議の議事録を作成することが不法行為に!?(大阪高判令和3年7月30日)

株主総会決議は、会社法が定める手続きに従う必要があります。必要な決議を行ったように装って、株主総会決議の議事録を作成する会社も散見され、決議の有効性が争われる紛争が生じています。しかし、今回紹介する大阪高裁の裁判例では、虚偽の株主総会決議を作成したことを理由とする不法行為に基づく損害賠償責任が争われ、大阪高裁がこれを認めたため、注目です。

【事案の概要】

 本件において、株主であり取締役でもある原告は、被告会社の株式を有していることの確認と株主総会決議が不存在であることを争っていました。これに対し、被告は、原告主張の株式名義が原告にあるものの実質的所有者は被告にあるとの主張をしていました。

また、招集通知を欠いたまま開催された株主総会決議について、原告の出席がないにもかかわらず、原告が議案に賛成したとの虚偽内容の株主総会決議が作成されていることが原告の氏名の無断利用であり人格権を侵害するとして不法行為に基づく損害賠償の請求もしていました。

【株主権確認、総会決議不存在確認】

 大阪高裁は、株主権確認と株主総会決議不存在確認訴訟については、大阪地裁と同じ判断を下しました。

 まず、株式を有することの確認については、判例上、名義株について株式取得資金の拠出者等を考慮して実質上の引受人を株主とするとされており、本件においても、資金拠出の面や株式の贈与契約書の作成がある点から、原告が株式を有することを認めました。

 次に、総会決議不存在の確認についても認められました。株主総会決議に取消事由しかなく取消訴訟を提起する場合は、出訴期間の制限がありますが、取消事由より重い不存在事由がある場合は、いつでも不存在であると争うことができます。

 株主総会決議から排除された株式数の割合が4割を超える場合には不存在、2割に満たない場合は取消事由とするのが裁判例の傾向となっており、本件でも原告所有株式の割合が全体の7割を超えていたため、大阪地裁、高裁ともに株主総会決議が不存在であると判断しました。

【虚偽内容の株主総会議事録の作成】

 虚偽内容の株主総会議事録の作成の点について、大阪地裁では、被告会社の従前の株主総会決議は、実際の会議体として開催されることはなく、原告の明示又は黙示の同意により株主総会決議がされていたこと、今回問題となった決議について原告が異議を唱えることなく了承するものと被告会社が考えて虚偽内容の株主総会議事録を作成したことを理由として、不法行為に該当するような違法な行為ではないと判断し、原告の請求を退けました。

 この大阪地裁の判断に対し、大阪高裁では、虚偽内容の株主総会議事録の作成を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を認めました。その理由として、本件の株主総会決議の内容が原告の取締役解任決議であり、原告と被告会社の代表取締役が不仲だったことをも考慮すると、原告の解任が懲罰的な意図をもってされたと推認できること、被告会社の実情を知る者が解任登記を見れば懲罰的な意図で解任されたという印象を持つことは避けられず、原告の社会的信用を低下させることを挙げ、不法行為に当たると判断しました。もっとも、認められた損害額は低廉な額(5万円)でした。

【弁護士としての所感】

 今回の大阪高裁の判断は、虚偽の株主総会議事録が作成されたことをもって損害賠償請求を認めており、今後意識しておく必要がある裁判例と思われます。

取締役にとって辞任するのと解任されるのでは、経営能力等の評価について第三者からの印象が大きく変わります。ましてや、取締役解任登記として外部から解任されたことが明らかになると、取締役の信頼の低下は現実的なものになります。虚偽の株主総会議事録が作成されたことと、登記により解任されたことが外部からわかるようになったこと、この点をもって、大阪高裁は、不法行為に基づく損害賠償請求を認めており、妥当な評価かと思われます。もっとも、この判断は、本件の事実関係の下でされたものであり、虚偽の株主総会議事録が作成された場合、一律に不法行為が成立すると認めるものではありません。

株主が少ない場合等には株主総会決議開催の手間を考慮して、株主に招集通知を送る等の法定の手続きを経ることなく株主総会議事録を作成しているケースも散見されます。しかし、開催していない株主総会の議事録を作成し、決議内容を登記にも記載した場合、今回の裁判例のように不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。また、それだけではなく、虚偽の株主総会議事録を作成した場合は、100万円以下の科料に処される可能性もあり(会社法976条)、株主総会を適切な手続を経ず開催することには、様々なリスクがあります。

これまでの株主総会が適法に開催できているのか不安、そもそも開催していない…と心配される法務担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。

京都総合法律事務所では、株主総会開催のサポートや過去の株主総会のリカバリー方法も含め、企業経営を法律的側面からサポートいたします。この機会にぜひご相談ください。

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