健康情報(要配慮個人情報)の保護
労働者の病歴等の健康情報は、要配慮個人情報に該当します。かかる情報は、その取扱いによって差別や偏見、その他の不利益が生じるおそれがあるため、特に慎重な取扱いが求められます。かかる病歴等の健康情報に関しては、本人の同意を得ないで取得することが原則として禁止され、第三者に提供する場合にも本人の同意を得る必要があります。したがって、労働者の病歴等の健康情報については、採用時の面接で取得する場合、定期健康診断の結果に沿って労務管理に配慮する場合、あるいはメンタルヘルス不調社員を対応する過程で知り得た場合、慎重に取り扱う必要があります。
どのような健康情報が要配慮個人情報に当たるのでしょうか。
政令によれば、「病歴」に準じるものとして、診療情報、調剤情報、健康診断の結果、保健指導の内容、障害(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、その他の心身の機能の障害を含む。)、ゲノム情報(遺伝子検査により判明する情報のうち差別、偏見につながり得るもの(例えば、将来発症し得る可能性のある病気、治療薬の選択に関する情報等))等の情報があります。
事業者が健康情報を取り扱うにあたっては、以下の点に留意する必要があります。
健康情報に関しては、労働者の健康確保に必要な範囲で利用する必要がありあり、事業者は労働者の健康確保に必要な範囲を超えてこれらの健康情報を利用することはできません。
また、事業者は、法令に基づく場合等を除き、労働者から健康情報を取得する場合、予め本人の同意を得ておく必要があります。
さらに、事業者は、自傷他害のおそれがあるなど、労働者の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合等を除き、本人に利用目的を明示する必要があります。
加えて、ストレスチェックを実施した医師、保健師等は、労働者の同意を得ないでその結果を事業者に提供できないこととなっていますが、事業者は、ストレスチェックの実施者等に結果の提供を強要したり、労働者に同意を強要する等により、ストレスチェックの結果を取得することはできません。
事業者は、労使の協議により健康情報等に関する取扱規程を策定することが求められます。取扱規程は、労働者の健康情報等について事業場の労働者全員に適用されるものなので、労働者への周知等を図る上で、就業規則等に記載する方がよいでしょう。
取扱規程には、健康情報等を取り扱う目的及び取扱方法、健康情報等を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う健康情報等の範囲、健康情報等を取り扱う目的等の通知方法及び本人の同意取得、健康情報等の適正管理の方法、健康情報等の開示・訂正等の方法、健康情報等の第三者提供の方法等を定める必要があります。
弊所でも、健康情報等の取扱規程の作成・チェックを行っていますので、お悩みの場合にはご相談ください。