弁護士の商標権に関する相談
商標権侵害のリスクと解決事例
どのような場合に商標権侵害が成立するか
自社が商標権を有する商標と同一又は類似の商標を、第三者が商標権に係る指定商品と同一又は類似の商品又は役務(サービス)に使用した場合、商標権侵害が成立します。
ここでいう商標の使用とは、商品や商品の包装等に商標を表示して、当該商品を販売、輸出、輸入等することをいいます。インターネットの通販サイト等で商標を表示して商品を販売することも商標の使用に該当します。また、飲食、宿泊、運送などのサービスを提供するために使用する物(レストランの食器、ホテルのアメニティグッズ、運送用のトラックなど)に商標を表示すること、インターネットの画面に商標を表示してサービスを提供すること(オンラインレッスンで商標を表示すること)、商品又はサービスに関する広告等に商標を表示することをいいます。
このような商標の使用行為を行った場合に商標権侵害が成立します。
商標権侵害のリスク
他人の商標権を侵害した場合、販売停止を求められる、損害賠償を請求される、場合によっては刑事罰を課されるといったリスクがあります。
また、自社の登録商標と同じようなマークの商品が販売されるなどした場合、他社の商品等と誤認混同が生じて、売上が低下する、粗悪品等と間違えられる、ブランド価値が希釈化するといったリスクがあります。粗悪品等と間違えられた場合、企業の信用が低下することもありますので、注意が必要です。
商標権を侵害してしまった場合、又は商標権を侵害された場合にどのように対応すればよいか
✓他人が自社の登録商標と似通ったマークを使用しているので、使用を止めてほしい。自社が被った損害の賠償を請求したい。
✓他人から商標権侵害を主張されているが、侵害にあたるかどうか相談したい。どのように対応したらわからない。
✓商標権を侵害しているかもしれないが、引き続き使用したいので、ライセンスを受けられるように交渉したい。
商標権侵害の成否に関しては、商標又は商品が類似するか、商標としての使用に該当するか、商標権の効力が及ぶ範囲の使用か、先使用権を有するか等、法的な検討が必要となるため、専門家に相談された方がいいでしょう。
当事務所が商標の侵害事件について依頼を受けた場合、以下の対応を行います。
■交渉
他人が自社の登録商標と似たような商標を使用している場合、警告書を送付して商標の使用を中止するように求めます。また、損害算定のために必要な情報の開示を求めます。
自社が使用しているマークについて他人から商標権侵害を主張された場合、商標・商品の類否を検討した上で、商標権侵害を争う余地がある場合には、商標又は商品が非類似である旨の主張を行います。また自社のマークの使用が商標の使用に該当しない場合、自社が先使用権を有する場合には、その旨の主張を行います。商標権侵害が成立する場合は、ライセンス交渉、損害賠償額等についての交渉を行います。
■法的手続
差止請求の仮処分申立て、差止請求・損害賠償請求訴訟、刑事告訴などの手続を行います。商標権侵害を主張して訴訟を起こされた場合には、代理人となって商標権侵害の成否等について争っていくことになります。
商標権を侵害する商品が海外から輸入されている場合には、輸入差止申立ての手続を行います。
解決事例
■インターネットの通販サイトで、第三者が自社の登録商標と類似する商標を使用してバッグを販売していた事例において、警告書を送付して商標の使用を止めさせた。
■商標権者から、レストランの店名が商標権を侵害するという警告を受けた事例において、商標権の成否について反論を行うとともに、損害賠償額について減額交渉を行い解決した。
■商標権者から、照明器具に使用していた表示が商標権を侵害するという警告を受けた事例において、商標としての使用に該当しないという主張を行い、交渉して解決した。
イベントのタイトルと商標権
はじめに
まちを歩いたり電車に乗ったりすれば、多様な行政目的の実現に向けた様々なイベントの案内をよく目にします。親しみやすいタイトルを考えたり、目を惹くチラシを作ったりする際、どこかで目にした言葉やインターネットで検索した画像等を参考にされることも多いと思われます。
その際、どうか商標権や著作権といった知的財産権にご注意ください。知らず知らずのうちに知的財産権を侵害しているケースは案外多いものです。最終的に問題がなかったとしても、紛争が発生すれば業務が混乱することは必至です。
今回は、知的財産権のうち商標権侵害について、抽象化した説例を踏まえて検討します。
説例
あるイベントにおいて、「ボクササイズ」というタイトルをつけたチラシを配布し、イベントを実施していたところ、当該タイトルの商標権者から、①イベントの即時中止、②当該タイトルの有償使用許諾契約の締結、③無断使用期間分の損害賠償(60万円程度)を求める通告書が届きました。
検討
(1)商標権侵害のリスク
商標権侵害に当たると、民事的には、①差止請求(商標法36条)、②損害賠償請求(民法709条)・不当利得返還請求(民法704条)、③信用回復措置請求(商標法39条が準用する特許法106条)ができ、これらとは別に、刑事事件となることもあります(商標法78条~85条)。
(2)商標権侵害について
登録商標と同一又は類似の商標を指定商品又は指定役務(商標登録の際に指定された商品又は役務のこと)と同一又は類似の商品又は役務について使用する行為が商標権の侵害となります。
商標権侵害に当たるか否かの判断において、商標の類否や商品・役務の類否が問題となるケースが多く見られます。
商品・役務の類否は、取引の実情を考慮して、商品又は役務に標章を使用した場合に出所(商品・役務の提供主体)の混同が生じるか否かによって判断がなされています。また、商標の類否は、外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(商標から生じる意味)の類似性の検討に加え、取引の実情を考慮して、総合的に出所混同のおそれがあるかどうかを基準に判断がなされています。
(3)チェックポイント
商標権侵害を主張された場合、まずは、①商標権者か否か、②商標登録の内容、③出所混同の有無(商標の同一性・類似性、商品・役務の同一性・類似性)を検討することになります。説例では、これらを充たしそうです。
しかし、諦めるのはまだ早いです。④商標権の効力が及ばない範囲での使用か否か(自己の氏名、商品・役務の普通名称・産地・品質等の内容を普通に用いられる方法で使用するものか(商標法26条)、⑤登録無効の抗弁(無効理由が存在する場合、又は商標の普通名称化など後発的に無効理由を有するに至った場合(商標法39条で準用する特許法104条の3))、⑥商標的使用の有無(自他商品識別機能を発揮する態様での使用か否か)、⑦先使用権の有無(商標法32条)などの観点からのチェックも必要です。説例ではこれらの観点からの主張によって請求を封じました。
とはいえ、個別の判断は難しいものがあります。商標権侵害のリスクを考えれば、すぐに専門家に相談できる体制を整えておくのが望ましいでしょう。
おわりに
商標権侵害に当たる場合、損害賠償だけでなく、資材の廃棄や企画自体の中止に至るおそれがあります。そのようなことになれば、それまでの準備が水の泡です。
そもそも、紛争はそれ自体が業務の混乱を招きます。したがって、事前に回避することが極めて重要です。登録商標は特許庁のサイトでの検索が可能ですので、商標権侵害は比較的容易に避けることができます。
日頃から知的財産権に注意しながら、斬新で楽しいイベントを企画しましょう!
単色の色彩のみからなる商標の識別力
事案の概要(知財高裁令和2年3月11日判決・金判1597号44頁)
全国の賃貸、分譲売買、中古売買等の不動産情報を取り扱う不動産総合ポータルサイト「LIFULL HOME‘S(ライフルホームズ)」(以下「原告ウェブサイト」という。)が、同ウェブサイトで使用している橙色に関し、不動産総合ポータルサイトでは「SUUMO」は緑色、「いい部屋ネット」は赤色、「O-uccino」はピンク色、「ヤフー不動産」は赤色、「アパマンショップ」は濃青色、「athome」は紅赤色という形で棲み分けがなされており、不動産総合ポータルサイトに接する取引者、需要者は、商標登録出願に係る橙色によって、原告のウェブサイトと即座に認識、理解することができるとして、橙色の色彩について自他役務識別力を有している、またウェブサイトで広く使用された結果、使用による識別力を獲得したとして、特許庁がなした拒絶審決の取消を求めた事案です。
特許庁の審決
特許庁は、①本願商標は、橙色の色彩のみからなる商標であるところ、本 願の指定役務との関係においては、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識されるものであり、また、本願商標と近似する色彩が、請求人(原告)以外の者によって、ウェブサイトに使用されていることからすれば、何人もその使用を欲するといい得るものであり、これを一私人に独占させることは妥当ではない、②原告による本願商標の使用により識別力を獲得したものと認められないとして、本願商標は商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標)に該当するから、商標登録を受けることができないと判断しました。
知財高裁の判断
本件において、本件商標が本願商標の商標法3条1項6号に該当するか、仮に該当する場合でも広く使用されたことにより識別力を獲得したか(同法3条2項)が争われました。
(1)3条1項6号該当性について
知財高裁は、
①住宅やマンションなどの不動産物件の購入、賃借等を検討している一般の消費者は、ポータルサイトで必要な情報に関する検索を行い、その検索結果に基づいて、不動産業者等に対し、掲載物件についての問合せをしたり、不動産業者等から紹介を受けるなどして、不動産 取引を行うのが通常である、
②本願商標は橙色の単色の色彩のみからなる商標であるところ、橙色は「赤みを帯びた黄色。オレンジいろ。」であり、JISの色彩規格にも例示されていることからすると、特異な色彩であるとはいえない、
③橙色は広告やウェブサイトのデザインにおいて、前向きで活力のある印象を与える色彩として、一般に利用されているものと認められる、
④不動産業者のウェブサイトには、ロゴマーク、その他の文字、枠、アイコン等の図形、背景等を装飾する色彩として橙色が普通に使用されていることが認められる、
⑤原告ウェブサイトのトップページにおいても最上部左に位置する図形と「LIFULL HOME’S」の文字によって構成されたロゴマーク、その他の文字、白抜きの文字及びクリックするボタンの背景や図形、キャラクターの絵、バナー等の色彩として、本願商標の橙色が使用されているが、これらの文字、図形等から分離して本願商標の橙色のみが使用されているとはいえない
⑥以上を総合すると、原告ウェブサイトに接した需要者においては、 本願商標の橙色はウェブサイトの文字、アイコンの図形、背景等を装飾する色彩として使用されているものと認識するにとどまり、本願商標の橙色のみが独立して、原告の業務に係る役務を表示するものとして認識するものと認めることはできないので、3条1項6号に該当すると判断しました。
(2) 使用による識別力の獲得について
知財高裁は、
①本願商標の橙色は特異な色彩であるとはいえない
②橙色は、広告やウェブサイト のデザインにおいて、前向きで活力のある印象を与える色彩として一般に利用されており、不動産の売買、賃貸の仲介等の不動産業者のウェブサイトにおいても、ロゴマーク、その他の文字、枠、アイコン等の図形、背景 等を装飾する色彩として普通に使用されている
③原告ウェブサイトにおける本願商標の橙色の使用態様は、ロゴマーク、その他の文字、白抜きの文字及びクリックするボタンの背景や図形、キャラクターの絵、バナー等の色彩として本願商標の橙色が使用されているが、これらの文字、図形等から分離して使用されていたものといえない
④以上に鑑みると、原告による原告ウェブサ イトにおける本願商標の使用の結果、本件審決時において、本願商標の橙色のみが独立して、原告の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないと判断し、3条2項の適用も否定しました。
コメント
(1)平成26年商標法改正(平成27年4月1日から施行)により、色彩のみからなる商標(色彩商標)について、商標登録することができるようになりました。
(2) 商標審査基準での取扱い
色彩のみからなる商標は、原則として、商第3条第1項第2号、同項第3号又は同項第6号に該当することになります。したがって、色彩のみからなる商標が登録されるためには、色彩が使用された結果、当該色彩が独立して(図 形や文字等と分離して)その商品又は役務の需要者の間で特定の者の出所表示として認識されていることが必要となります。
この使用により識別力を有するに至ったか否かについての判断は、商第3条第2項に関する商標審査基準に従って行うこととなりますが、色彩のみからなる商標の性質上、以下の点が留意されます。
A 出願商標と使用商標の同一性の判断
使用により識別力を有するに至った商標として認められるのは、出願商標及び指定商品又は指定役務と、使用されている商標(以下「使用商標」という。)及び商品又は役務とが同一の場合に限られるとするのが原則です。
この点に関し、色彩のみからなる商標の使用の証拠は、他の文字や図形等とともに色彩が使用されているものが多いと考えられるところ、出願商標と使用商標との同一性については以下のとおり取り扱われます。
①提出された証拠が他の文字や図形等とともに色彩が使用されているものである場合、原則的にはそのような証拠のみに基づき、当該色彩が使用により識別力を有するに至った商標であると認めることはできない。
②ただし、使用されている色彩と出願商標とが同一の色彩であって、例えば以下の証拠が提出された場合には、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として、使用による識別力の獲得の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る色彩部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断がなされます。
i) 包装紙又は看板等の大部分を当該色彩のみが占めている場合や無彩色を地色として当該色彩のみを使用して地模様を構成している場合等、明らかに当該色彩が需要者に強い印象を与えるような態様で使用されていると認められる証拠
ii) 多様な態様(文字・図形や他の色彩等の組合せ)をとりつつも当該色彩を常にアクセントカラー等として使用している証拠
iii)需要者が当該色彩をもって何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、需要者に対するアンケート調査結果)
B 商標の構成態様や商取引の実情の考慮
ⅰ)商標の構成態様
色彩のみからなる商標の構成(単一の色彩からなるものか複数の色彩の組み合わせからなるものか、また、複数の色彩の組合せである場合に色彩の組合せの方向指定がされているか否か等)について考慮する。
ⅱ)商取引の実情
指定商品又は指定役務を取り扱う業界の市場特性について出願人から主張があった場合には考慮する。例えば、参入企業数(寡占業界か否か)や当該業界における色彩の使用状況(多種多様な色彩が一般的に使用される商品・役務であるか否か、等)等の事実を考慮する。
本件では、本願商標が橙色の単色であるため自他役務の識別力がないとして商標法3条1項6号に該当する旨判断したものと解されます。
このような単色の色彩は、世間一般的に使用されるもので、特定の事業者の業務に係る役務を表示するとは認められません。本件でも、様々な場面で多くの人によって使用されていることを考慮し、特定の私人が独占するのは相当でないと考え、商標法3条1項6号に該当し、かつ使用による識別力の獲得を否定したものであり、妥当な判断であると思われます。
部品に付された商標にご注意
事案の概要(最判平成12年2月24日・刑集54巻2号67頁)
本件は、いわゆるパチスロ機を製造販売する会社の代表取締役である被告人が、同会社の従業員らと共謀の上、何ら権限がないのに、①シャープ株式会社(以下「シャープ」といいます。)が電子応用機械器具等を指定商品として商標登録を受けている「SHパチスロ機RP」(横書)と同一の商標(以下「本件商標」といいます。)を付した電子部品約1万個を、パチスロ機の主基板に取り付けて販売する目的で所持し、②右電子部品を取り付けたパチスロ機61台を販売して譲渡し、もって、シャープ株式会社の商標権を侵害したとして、商標法78違反の罪により起訴された事案です。
事実関係
被告人らが、パチスロ機に組み込み販売する目的で他から入手したCPU(中央処理装置、以下「本件CPU」という。)には、被告人らが入手する前から何者かによってシャープの許諾を得ることなく本件商標が付されていました。被告人らは、シャープの許諾がないことを認識しながら、本件CPUをパチスロ機の電子制御をつかさどる構成部分である主基板に、他の電子部品とともに半田付けするなどして装着した上、その主基板を、透明又は半透 明のプラスチックケースで覆い、パチスロ機の本体とは別に保管していました。本件CPUは、主基板に装着された後も、元の外観及び形態を保っており、それに付された本件商標は、ケースを通してもこれを視認することができる状況にありました。
パチスロ機は、中間の販売業者を通じてパチンコ店に販売されましたが、その際、本体と主基板が別々に配送された後、パチンコ店で本体内の最上部に主基板が差し込まれるなどして組み立てられ設置されていました。
主基板は、パチスロ機の本体とは別にパチンコ店に備え置く補修用部品としても販売され、パチスロ機の主基板が故障した場合にこれと交換されることもありました。
主基板に装着された本件CPU及びそれに付された本件商標は、パチスロ機の外観上は視認することができませんが、以上のようなパチスロ機の流通過程において、中間の販売業者やパチンコ店関係者に視認される可能性がありました。
最高裁の判断
「本件商標は、本件CPUが主基板に装着され、 その主基板がパチスロ機に取り付けられた後であっても、なお本件CPUについての商品識別機能を保持していたものと認められるから、前記起訴に係る被告人らの各行為について、商標法78条の商標権侵害の罪が成立するとした原判決の判断は正当である。」
以上により、最高裁が被告人らの上告を棄却し、大阪高裁が言い渡した懲役6月・執行猶予2年の判決が確定しました。
コメント
他人の登録商標と同一の商標が付されていたのは、パチスロ機の部品であるCPUであり、パチスロ機に組み込まれることによってCPUは商品として独立性を失うため、これに付された商標は商品識別機能を果たさないのではないかが問題となりました。
一審大阪地裁は、CPUはパチスロ機に組み込まれることにより、商品としての独立性を失い、これに残存する標章は商標法上保護されるべき商品識別機能を失うとして、被告人らに対し、無罪を言い渡しました。
これに対し、大阪高裁は、
「商標の付された商品が、部品として完成品に組み込 まれた場合、その部品に付された商標を保護する必要性がなくなるか否かは、商標法が商標権者、取引関係者及び需要者の利益を守るため商標の有する出所表示機能、自他商品識別機能等の諸機能を保護しようとしていることにかんがみると、完成品の流通過程において、当該部品に付された商標が、その部品の商標として右のような機能を保持していると認められるか否かによると解すべきである」とした上で、
部品に付された商標が、部品の商標としての機能を保持しているか否かの判断基準として、
①商標の付された商品が部品として完成品に組み込まれた後も、その部品が元の商品としての形態ないし外観を保っていて、右商標が部品の商標として認識される状態にあること
②右部品及び商標が完成品の流通過程において、取引関係者や需要者に視認される可能性があること
という2つの基準を掲げ、被告人らの商標権侵害を肯定しました。
最高裁は、大阪高裁が示した判断基準も含め、原判決を肯定したものと解されます。
商標権トラブルの未然防止策
商標権の取得に関する事前チェック
知的財産は、模倣が容易で、不特定多数が同時に使用することが可能であるという性質を有するため、知的財産制度は、創作者の創作意欲を保持・向上させるため、様々な形で保護を行い、規制をかけています。
そのため、意図的に侵害しようとしなくとも、商標権を侵害してしまうケースが後を絶ちません。
知的財産権を取得する場面では、
・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか
等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。
このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。
また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。
商標権にまつわるトラブルを未然に防止するため、商標権に精通した弁護士に相談できる体制を整えておかれることをおすすめします。
商標権に関する契約書の整備と定期的なバージョンアップ
商標権にまつわるトラブルを未然に防止するための重要な対策は、社内に商標権に関する契約書を整備し、かつ、定期的にバージョンアップすることです。
整備すべき契約書としては、
・秘密保持契約書
・ソフトウエア等の開発委託契約書
・共同研究開発契約書
・商標権利用許諾契約書
といったものが挙げられます。
これらが整備されていないようであれば、商標権にまつわるトラブルが生じるリスクは高いと思われます。
社内の契約書を確認し、必要な契約書が整備できているか確認してください。
また、商標権の分野は、法改正や新判例が頻出しています。
せっかく整備した契約書も、古くなってしまえばリスクの種となります。
整備した契約書は定期的に点検し、バージョンアップできる体制を整えておかれることをおすすめします。
商標権トラブルの弁護士相談時期
商標権について弁護士に相談するベストのタイミングは、今、このサイトをお読みいただいているときです。
ただ、これだけでは大まかすぎるかもしれませんので、もっと具体的な場面をお示しすると、
①自社の商標権等の知的財産権を侵害された場合
②商標権等の知的財産権を侵害されたと訴えられた場合
③商標権等の知的財産権が絡む契約を結ぶ場合
の3つの場面です。
①自社の商標権等の知的財産権を侵害された場合
知的財産は、コピーが容易で、不特定多数が同時に消費することが可能ですので、侵害を放置しているとあっという間に価値が下がってしまいかねません。
直ちに証拠を保全して警告書を発する等の権利をまもるための戦いを開始しなければなりません。
いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、どのよう(How)に侵害しているのかがわかる証拠を集め、それが知的財産権の侵害であると言える理由(Why)を法的に整理する必要があります。
②商標権等の知的財産権を侵害されたと訴えられた場合
知的財産権は、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうケースが後を絶ちません。
一般的な名称と思われる言葉を用いたプログラムを作ったところ、商標権侵害を主張されたという事案もありました。
もっとも、著作権や商標権が権利として保護されるためには、法律の要件を満たす必要があります。
上記ケースでも、精緻な法的主張を行うことで、最終的にはトラブルを回避することができました。
慌てず、素人判断をせず、落ち着いて弁護士に相談してください。
③商標権等の知的財産権が絡む契約を結ぶ場合
知的財産権が絡む契約を結ぶ場面では、
・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか
等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。
このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。
また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。
商標権にまつわるトラブルを未然に防止するため、商標権に精通した弁護士に相談できる体制を整えておかれることをおすすめします。
商標法についての弁護士の使い方ベスト4
商標権等の知的財産権についての弁護士の使い方ベスト4をご紹介します。
①知的財産権を侵害することがないかという事前チェック
②知的財産権を侵害された場合・訴えられた場合の交渉・訴訟対応
③知的財産権に関する契約書の作成・リーガルチェック
④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施
順番に見ていきましょう。
①知的財産権を侵害することがないかという事前チェック
知的財産は情報ですので、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうリスクをはらんでいます。
例えば、チラシを作成しようとする場合、ネット上から拾った画像や写真を使うと著作権侵害となる可能性が高いです。
著作権を侵害すると、差止請求が認められて企画がボツになってしまったり、刑事罰を受けたりするリスクもあります。
写真・画像・言葉・形・アイディアといった知的創造物や営業上の標識を用いようとする場面では、それにより知的財産権を侵害する可能性があるという意識をもっていただき、弁護士の事前チェックを受けていただくというのが、知的財産権についての弁護士の使い方の基本です。
②知的財産権を侵害された場合・訴えられた場合の交渉・訴訟対応
突然、内容証明郵便が届いた。
そこには知的財産権を侵害したと記載されている。
そんな場合であっても、慌てず、落ち着いて、弁護士に相談してください。
このような場面こそ弁護士の腕の見せ所です。
事実の冷静な分析と精緻な法的主張によりトラブルを回避することができるケースもあります。
また、残念ながら知的財産権を侵害してしまっていた場合であっても、誠意ある対応を通じて損害を最小限に抑えるべく、一緒に尽力します。
③知的財産権に関する契約書の作成・リーガルチェック
知的財産権が絡む契約を結ぶ場面では、
・対象とする知的財産は何か
・譲渡人は本当にその権利を有しているか
・譲受けに際して何か制約は無いか
・制約がある場合、それはどのようなものか
・譲り受けた後は自由に使うことができるのか
・できないのであれば何に気をつけなければならないのか
・自分が権利者であることを第三者に対して主張するためにはどのような要件を満たす必要があるか
等のチェックポイントを確認し、それを契約書に落とし込んでいく必要があります。
このような作業は知的財産に関する十分な知識が必要となりますので、見様見真似やネット上で取得できる雛形を流用することはおすすめできません。
また、契約書は紛争になった際にこそ効果を発揮するものですので、相手が提示した契約書にそのままサインすることは大変危険です。
知的財産権に関する契約書を作成する場面こそ、知的財産権にまつわるトラブルを未然に防止するため、弁護士に書面作成を依頼したり、リーガルチェックを受けていただいたりする絶好のチャンスです。
④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施
知的財産権には、意図的に侵害しようとしなくとも、侵害してしまうリスクがあります。
これを防止するためには、知的財産権に関する社内の意識と理解を高めることが重要です。
そのために有用なのが社員教育・社内研修です。
知的財産権に関する研修は、紛争の実態を知っている弁護士が適任ですので、研修の依頼も、知的財産権についての弁護士の使い方としておすすめです。
知的財産権の基本から最新判例の動向まで、幅広く対応することができます。
弁護士費用の目安
①商標権を侵害することがないかという事前チェック
1時間あたり2万円(税別)
②商標権を侵害された場合・請求された場合の交渉・訴訟対応
内容証明郵便の作成
15万円(税別)~
輸入差止め(水際対策)
30万円(税別)~
事件(交渉・保全・訴訟)の着手金・報酬金
着手金(受任時にお支払いいただく費用。ファイトマネーです。)は、
・侵害された場合:相手への請求額
・請求された場合:相手からの請求額
を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。
請求額が、
・300万以下の場合、その8%
・300万を超え3000万以下の場合、その5%+9万円
・3000万を超え3億円以下の場合、その3%+69万円
・3億円を超える場合、その2%+369万円
報酬金(事件の結果の程度に応じてお支払いいただく費用。成功報酬です。)は、
・侵害された場合:相手から得た額
・請求された場合:相手の請求を排除した額
を基準とし、次の計算式に消費税を加えた額となります。
得た額又は排除した額が、
・300万以下の場合、その16%
・300万を超え3000万以下の場合、その10%+18万円
・3000万を超え3億円以下の場合、その6%+138万円
・3億円を超える場合、その4%+738万円
③商標権に関する契約書の作成・リーガルチェック
契約書の作成
・定型的なもの5万円(税別)~
・非定形なもの10万円(税別)~
契約書のチェック
・定型的なもの3万円(税別)~
・非定形なもの5万円(税別)~
※対象となる権利の価値、契約目的、リスクの内容、納期等を踏まえてご提案させていただきます。
なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、
・来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限
・年1回程度の研修が無料
に加え、高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックを無制限で対応することが可能です。
④知的財産権の取り扱いに関する社内研修の実施
15万円(税別)~
※研修目的、時間、参加人数、開催場所等を踏まえてご提案させていただきます。
なお、「リーガルサポートプラン・スタンダード」(月額10万円・税別)をご契約いただいた場合、
・来所、Web、メール、チャットでの法律相談が無制限
・高難易度等を除く契約書等のリーガルチェックが無制限
に加え、年1回程度の研修を無料で実施することが可能です。
1.相談料・契約書作成等の弁護士費用 |
||
知的財産に関する法律相談料 |
20,000円/1時間 |
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鑑 定 |
150,000円~ |
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契約書 |
契約書の作成 |
定型的なもの:50,000円~ |
非定型なもの:100,000円~ |
||
契約書のチェック |
定型的なもの:30,000円~ |
|
非定型なもの:50,000円~ |
||
内容証明郵便の作成 |
150,000円~ |
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輸入差止め(水際対策) |
300,000円~ |
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知的財産権に関する研修 |
150,000円~ |
2.事件(交渉・保全・訴訟)の着手金・報酬金 |
着手金:下記の算定基準により算定した額(事件の結果いかんにかかわらず、受任時にお支払いただく費用です。) |
なお、経済的利益を算定しがたい事件については、着手金を75万円とします。 |
報酬:下記の算定基準により算定した額(事件結果の成功の程度に応じてお支払いただく費用です。) |
なお、経済的利益を算定しがたい事件については、その額を1000万円とします。 |
着手金・報酬金の計算方法(別途消費税がかかります。) |
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経済的利益の額 |
着手金 |
報酬金 |
300万円以下の事件 |
8% |
16% |
300万円を超え3,000円以下の事件 |
5%+9万円 |
10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下の事件 |
3%+69万円 |
6%+138万円 |
3億円を超える事件 |
2%+369万円 |
4%+738万円 |
まとめ(弁護士相談のメリット)
これまでご説明したとおり、商標権をはじめとする知的財産は価値のある情報ですので、その取扱いは慎重を期する必要があります。
特に、
①商標権を侵害された場合
②商標権を侵害されたと主張されている場合
③商標権に関する契約を結ぶ場合
は必ず弁護士にご相談ください。
相談だけで回避できるトラブルは多数あります。
また、こじれる前に解決できれば、費用と時間を節約することができます。
私達の経験上、相談しないメリット、相談しない方が良い場面というものはほとんど見当たりません。
こんな段階で相談して良いのか、こんな段階だと遅すぎるのではと思わず、思い立った時点でぜひご相談ください。
最善を尽くさせていただきます。